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カバーデザイン 中原達治


トリプル・エックス

〜秘本シリーズ

a88

《収録作品》

『路地の裏』藍川京
『熟女サポート』館淳一
『ロデオガール』白根翼
『焔のように』安達瑤
『女体とて一個の肉塊にすぎない』森奈津子
『アフターファイブ』和泉真紀
『妹離れ』橘真児
『淫ら風薫る』睦月影郎
『乙女、パンツを買いに――由奈の『摘めない果実』草凪優


《読者からの解説と感想》

「熟女サポート」
 麻布ヒルズの自家発電プラントのメンテナンスを業務とする志免野亮は、重電機メーカー松芝重電工の子会社、松芝テクノパワーのエンジニアだ。
 過酷な交代勤務を終え、仮眠のための待機宿舎でオナニーでもして寝ようと思った矢先、班長の松井から意外な相談を持ちかけられる。次期班長に亮を推すかわりに、ある事柄を託したいというのだ。
 それはなんと、掃除のおばさん三崎智子のセックス・サポートをしてほしいというのだ!
   

「いらっしゃい。どうぞ」
 向かいあった女を見て亮は目を疑った。
 そこに立っているのは背丈こそ同じだが、宿舎で見る「掃除のおばさん」と同一人とは思えない、恥じらうような人なつっこい笑みを浮かべた、魅力的な熟女だった。
 しかも智子は、ネグリジェを纏っていた。色はチェリーレッド。フリルのいっぱいついた、扇情的なデザインの寝衣はほとんど透明に近く、豊かに盛り上がった乳房の頂点に突き出た乳首がくっきり見えた。下にはやはり赤い色のバタフライショーツを着けていたが、それも蝉の羽のように薄く、二枚のナイロンで覆われていても濃密なデルタゾーンの形状はハッキリと見えた。

 見慣れたものが見知らぬものに変貌する瞬間ほどドラマチックなものはないだろう。これは、ふだん見慣れた地味で魅力のない「掃除のおばさん」が、突如肉感的な熟女と化す瞬間を捉えた物語である。  巨大ビルの自家発電システムのメンテナンスを担うという主人公の職種が目新しく、面白い。過酷な交代シフトをこなす仕事は、それ相応のストレスを感じるものだろう。そうしたストレスと「掃除のおばさん」を組み合わせたところに、この作品の面白味がある。
 意表を突く先輩の相談には、さらなる展開があるのだけれど、それもすんなり納得出来る。ある種「艶笑喜劇」的な味わいもある一篇である。
 とにかく「掃除のおばさん」の変貌ぶりを、ひたすら楽しんでもらうしかない。
 音楽の好きなあなたなら、優団歌の名曲「おそうじオバチャン」を思い浮かべるのも一興かも知れない。哀愁のこもったコメディ・ブルースは、今やリアルなセクシー・ソングに聴こえるかも?
                     詩織

《作者より》

『熟女サポート』
「お掃除おばさん症候群」というのがあります。いや、正式にはないんですけど。(笑)
会社やお店などで清掃作業に従事している女性のことを、そこで働くたいていの男性は眼中にいれていないと思います。たとえ女性であっても自分とは無縁の存在だと。
ですが、たまに熟女好みでしかも低徊趣味の男性がいて、そういう女性たちに食指を伸ばす――というのがあります。これがまあ「お掃除おばさん症候群」。
そういう「本来はポルノの主役を張れない」立場の女性にも光を当てようという試みはよくやってきました。
若い男性がそういった「あり得ない」立場の女性に惹かれる物語は、短編では『未亡人・倒錯注意報』(初出は問題小説01/10、のち短編集『淫霧』に収録)が最初ぐらいでしょうか。これはファミレスの厨房で働くおばさんがウエイトレスに抜擢されたとたん、輝くようなエロティシズムを発散するようになる物語。近作『共有熟女』もこれに近いですか。
お掃除おばさんとしては『熟女人妻「なんでもやります」』(初出特選小説04/7)が最初だろうと思いますが、今回は完全版の「お掃除おばさん」モノです。(笑)
本当のエロティシズムは、夢みたいな女子高生やらOLやら人妻にあるんじゃないんです。
あなたのごく身近にいる、ふだんは目につかない、気にもとめない女性に探索の目を向けてみましょう。(笑)

《初出情報》

この短編は『小説NON』2008年6月号に掲載された。

《書誌情報》

本書は祥伝社より祥伝社文庫の一冊(1334 ん-144)として文庫判型で刊行された。
デジタルテキストは発売されていない。





ISBN978-4-396-33443-7
2005年7月30日=第一刷発行
発行=祥伝社
定価=619円+税

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