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カバーイラスト 吉田昭夫


秘悦

官能巨匠五人集傑作編

a43

《収録作品》

綺羅光『美乳艶技』
由紀かほる『肉穴ハメ殺し』
末廣圭『愛蜜の双曲肌』
子母澤類『淫情の契り』
館淳一『獲物の賭け』

《読者からの解説と感想》

「獲物の賭け」

 夢見山市、サンセット小路の一画でひっそりと店を構えるバー『ラ・コスト』は、ちょっと奇妙な店だった。
 無口なマスターと古いジャズやロックのレコード、そしてアルバイトの女性。
 新しくアルバイトに入ったまゆ美は、マスター黒木悠輔のバイク仲間イサオの妻だった。イサオは、『ラ・コスト』で何が行われているのか、前任のアルバイト康子がどんなことをしていたのかを知った上で、自分の妻をこの店に送り込んだのだった。
 ストリップ・ポーカー!
 それはマスターと客のポーカー勝負で、勝負に負けるたびに、連れの女性が着ているものを一枚ずつ脱いで行くというゲームだった。
 極度のマゾヒストであるまゆ美は、進んでその賭けの対象となることを望み、前任の康子が着ていた目の粗い黒のニットドレスを身に纏い、カウンターに立った。
 その噂を聞きつけて、真坂という男が『ラ・コスト』にやって来た。
 まゆ美を賭けて、ストリップ・ポーカーの真剣勝負が始まる。

 トイレの中でブラウスとスカートを脱ぎ、ノースリーブのドレスを着た。
(これは、確かに透ける……)
 まゆ美は洗面所の鏡に自分の上半身を映して、そのエロティックな効果に改めて驚かされた。
(ニットドレスではなく、ネットドレスと言った方がいい)
 多分、裏地がついていたのを康子が取り去ったのだろう。特に胸やヒップなど伸びる度合いの強いところほど、網目が広がり、下の肌や下着が透けて見える。

 女性を賭の対象とするという趣向は特に珍しいものではないけれど、本作では、賭けにのめり込んで行くサディストの男性の自虐的ともいえる心理、進んで賭けの対象になる女性の被虐的快感、そして自分の妻を生贄に差し出す夫の複雑な心境などが密接に絡み合って、ゾクッとするような凄味を醸し出している。
 また、直接的なセックスシーンがないことによって、皮膚感覚に迫る不思議な空気感が発生して、読者をこの人非人たちの宴に誘い、酔わせる。
 そう、これは小説というかたちで出店された不思議な店『ラ・コスト』そのものであり、読者は自然とその客であるような錯覚に陥り、この異様な賭けの目撃者となる。
 それとも、当事者になりたい?
 また、本作では『サンセット小路』(映画『サンセット大通り』に由来するものだろう)や、『ラ・コスト』(作中でも語られるように、サド侯爵の居城)といったネーミングの遊びや、キング・クリムゾンの『エピタフ』、MJQの『ジャンゴ』など、作者の音楽的嗜好がうかがえて、楽しい。

                               詩織

《作者より》

収録作品『獲物の賭け』は書下ろし55枚の短編です。
館淳一には珍しいギャンブルものです。(笑)
ストリップポーカーという賭けが登場します。
ストリップポーカーには二つ意味がありまして、一つは単純に、負けたら服を脱ぐ。
いわばカード版野球拳ですね。
もう一つはれっきとしたポーカーの一つで、札を表を見せて配るものです。見えないものをさらけ出してしまうからストリップ。
ただし配札5枚のうち最初の1枚だけが伏せられている、というのがミソ。
残り4枚に役が無くても伏せられた1枚が問題です。
相手の手がだいたい読めるだけに、ブラフの効かせかたが問題になってきます。

男たちは、自分の女を賭けて戦います。勝てば相手の女を獲、負ければ自分の女を奪われます。
描きたいのは賭けの対象にされる女たちの心理でした。
「モノとされる」のが真性M女の真の歓びとすれば、賭けの賞品とされるのは最高の歓びではないでしょうか。
夢見山の歓楽街はずれにある『サンセット小路』。小さな洋風酒場『ラ・コスト』で演じられる、
賭けに狂う男とマゾ性の罠に堕ちてゆく女たちの、ペーソス豊かな(笑)SMの佳編です。

《初出情報》

『獲物の賭け』は本アンソロジーのための書下ろし作品です。                   

《書誌情報》

本書は竹書房より竹書房文庫の一冊(SL-67)として文庫判型で刊行された。
デジタルテキストは発売されていない。





ISBN4-8124-1414-8
2003年11月26日=第一刷発行
発行=桃園書房
定価=648円+税

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