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カバーイラスト 吉田昭夫


狂艶

2003年上半期官能ベスト選

a39

《収録作品》

綺羅光『魔線のうねり』
海堂剛『淫靡な餌食』
みなみまき『私は熱い』
館淳一『性依存症の女』
ほか全11編。

《読者からの解説と感想》

「性依存症の女」

 医学博士・玉井勝治は、上京のたびに秘密の売春組織『スカラベ倶楽部』のマゾ娼 婦たちを相手に、秘めた欲望を解放することを愉しみにしていた。
 その日も、東京に着くなり『スカラベ倶楽部』に予約を入れた勝治は、プレイの前 に、東京で一人暮らしをはじめた娘のえりなと夕食をともにした。口数の少ない娘と の会話の内容は乏しかったが、えりなが彼のタバコに火を点ける時の自然な仕草が心 に引っかかった。
 娘を見送った後、『スカラベ倶楽部』から派遣された娼婦たちが部屋にやって来 る。 ひとりは馴染みの真理子。もうひとりは、えりなと年格好の似た美佐紀という 娘だった。
(これは、妙にそそる……)

「性依存症?」
「ええ、アルコールとかドラッグ、盗癖や過食と同じように、心の病気なんだそうで す。私は男の人とセックスするだけではなく、辱められて、なぐさみ物の段階にまで 貶められることで復讐していると言うんです」

 大方のジュンイチスト(熱烈な館淳一ファン)なら、この作品のラストをある程度 は予想出来るに違いない。だけど、そんな読者の予想を上手くはぐらかしつつ、深い 余韻を残す結末に導くテクニックにおいて、館淳一は第一級の作家である。
 本作には「性依存症」という耳慣れない言葉が登場するが、精神的な「癒し」とし てのSMプレイの在り方が示唆され、興味深い。
 そして、最近の館作品にしばしば登場する『スカラベ倶楽部』の経営者の名前が明 記され、その経営方法の一端が明かされているところも、注目。
 ところで館さん、えりなちゃんはホントはどうなんでしょう?
 是非長篇化してたっぷり描いてほしいと思います。
                            詩織

《作者より》

これまで見知ってきた女性たちのなかで、なかでもマゾ性の強い女性のなかに、
気になるタイプというのがありました。
見た目は地味なんです。控え目で大人しい。
そして知的。高学歴。仕事をしている場合は、高度な専門職が多い。
そういう女性が、ひどく淫乱なんですね。
「どうしてこんなひとが……?」と思ってしまいます。
たとえ売春クラブに所属していても、動機が金のためとは思えません。
何か、男を求めて憑かれたようなところがある。
それでいて、快楽のためでもないようなのです。
どういうものか、セックスでもSMプレイでも、オルガスムスを味わっていない。
いや、味わえない、というか、そういうタイプ。
それでも、一人でも多くの男と肌を交えたい、抱かれたい、責められたい。
はた目には自分で自分を壊すことに熱中しているとしか思えない、そんな行動をとります。
「東電OL殺人事件」の被害者の女性――といえば、一番いい例でしょうか。
出会い系サイトでも、似たようなタイプの女性が、けっこう多いのです。
相手かまわず体を委ねて自分を貶(おとし)めたがる、自己破壊型。
それでいて、日常の場では知的で有能な女性、あるいは良妻賢母としてふるまっています。
そういう二面性をもつタイプの女性をくくるキーワードが、
「性依存」(せいいそん)だと知ったのは、恥ずかしいことについ最近のことです。
「性依存症」は21世紀の館淳一が追求するテーマの一つとなりました。
この「性依存症の女」は、入門編とでも言うべき異色の短編です。
これを読んで「性依存」について考えよう!(笑)

《初出情報》

『性依存症の女』…………『小説CLUBロマン』2003年3月号                   

《書誌情報》

本書は竹書房よりスーパーラブロマン選集の一冊(SL-58)として文庫判型で刊行された。
デジタルテキストは発売されていない。





ISBN4-8124-1241-2
2003年7月5日=第一刷発行
発行=竹書房
定価=648円+税

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