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カバーデザイン 長谷川正治
人形 恋月姫 写真 片岡佐吉


聖バルテルミー女学院

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《収録作品》

安達瑤『ヴードゥ女子高生』
風間九郎『聖檻の死角』
睦月影郎『桃色の弥撒』
館淳一『女教師・聖なる私刑』
ほか全10編。

《読者からの解説と感想》

女教師・聖なる私刑  聖バルテルミー女学院の英語教師・深山令花は、放課後、自分が顧問をしているテ ニス部の生徒がケンカをしていると教えられ、校舎の外れにある部室へと向かった。 しかしそれは、生徒たちが仕組んだ罠だった。
 三人の少女たちによって縛られ、猿轡をかまされた令花。
 リーダー格の少女・長谷由美の手が、女教師のブラウスをはだけ、ブラジャーを外 し、そしてスカートへと伸びてくる。

 わたしはいつも、こういうアンソロジーを買うと、館さんの作品だけしか読まないのですが、今回はちょっと別格です。
 というのも、書名が示すように、このアンソロジーは「聖バルテルミー女学院」という共通の舞台を使って、各作家さんたちが競作するという趣向だからです。
 熱心な館ファンのみなさんならご承知のように、館さんの作品では、夢見山市をはじめとして、汐見市、ときわ市などの地名、田之倉、エメラルダス・アンバサダーなどの店名やホテルの名前などを作品をまたがって使用することによって、架空の世界でありながら、「館ワールド」と呼ばれる存在感のある世界を構築しています。
 このアンソロジーは、そうした館ワールド的な仕掛けを、複数の作家で共有する、クトゥルー神話大系のような趣向になっているのです。だからやはり、この趣向を楽しむためには、すべての作品を読みたくなってしまうのです。
 教師と教え子の夢のような桃色遊戯を描いた睦月影郎さんの「桃色の弥撤」を筆頭に、美少女の誘惑に屈して行く女教師を描いた北山悦史さんの「魔性の美少女」、タイトルの意味が文字通り意味深な牧村僚さんの「卒業」、ユニタードへのフェティッシュな視線が熱い櫻木充さんの「ふたりきりの降夜祭」、携帯電話を小道具に現代若者風俗を取り入れた風間九郎さんの「聖檻の死角」と、全寮制のミッションスクールという設定を生かしながら、バラエティ豊かな官能世界を描いています。キリスト教 の禁欲的な校風が、かえって教師や生徒たちを「いけないこと」へと駆り立てていくのですね。
 こうして官能小説のさまざまなバリエーションを楽しませてくれる前半に対し、後半ではSFやホラーの要素を加味した異色作が並びます。
 タイトル通り吸血鬼ものの新たな地平を開拓する龍泉さんの「ヴァンパイヤ・ダリ」、筒井康隆「時をかける少女」のチャーミングなパロディになっている藤水名子さんの「ラベンダーの思い出」、『異色ホラー傑作選』なんてアンソロジーに収録されててもおかしくない安達瑶さんの「ヴードゥー女子高生」、アニメチックなタイムスリップもの聖龍人さんの「淫聞、笹竜胆の間」と、官能小説の可能性を広げる作品の数々は、監修者である安達さんが「あとがき」で記しているように「ひと味違う官能ア ンソロジー」を実現していると思います。
 そしてそれらの力作、異色作の最後に、まさに「大トリ」ともいうべきわれらが館淳一さんの作品「女教師・聖なる私刑」が登場するのです。
 読みはじめると、傑作『セーラー服恥じらい日記』の逆パターンのレズッ子ものかなと思い、ワクワクします。ところがこれが、とんでもない展開になるのです。どうなるかは、読者であるあなた自身が体験(そう、これはまさに体験です)してください。幾多の館作品を読みこなしてきた熱心な読者の方でも、きっと新鮮な感動を味わえること間違いなしです。鳥肌が立つほどの傑作です。
 そしてここに描かれた官能世界は、魂の奥にじんじんと響いてくるような、とてつもない次元のものだと、わたしは思います。
 館さんは「僕は文学を目指したことはない」とおっしゃってますが、わたしはこれこそが「文学」だと思うんです。
 などと言うと、「何をもって文学と規定するのか」という難しい議論になってしまいそうですが、わたしにとって「文学」とは、「文章表現によって人間の感覚、認識の領域を広げる試み」ということになるでしょうか。
 と、難しいことを考える必要は、ホントはないんです。ただ素直に感じて、楽しめる小説です。
 わたしはこの作品を読んで、心の底から「令花先生になりたい!」って思いました。

                            詩織

《作者より》

執筆中

《初出情報》

『女教師・聖なる私刑』…………書き下ろし作品。                   

《書誌情報》

本書は廣済堂より廣済堂文庫の一冊(995 あ-10-2)として文庫判型で刊行された。
デジタルテキストは発売されていない。





ISBN4-331-60998-7
2003年3月1日=第一刷発行
発行=廣済堂
定価=600円+税

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