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カバーイラスト 吉田昭夫


秘肉の宴

2002年官能ベスト選

a32

《収録作品》

綺羅光『淫化する憧憬』
赤松光夫『愛人ペニス』
高竜也『忘れゆく女』
館淳一『渇いた肉契』
ほか全11編。

《読者からの解説と感想》

「紹介したい客がいるから」
 SMクラブ『エクスプローラー』のママ・杏子の話はいわくありげだった。
 好奇心をそそられた郁絵は「会ってみるだけなら、かまわないけど」と答えた。
 指定された赤坂の豪華なシティホテルの一室で彼女を待っていたのは、美人女優として有名な御所靖子だった。
 御所靖子の問いに、郁絵は杏子との高校時代からのレズビアン関係、SM体験を告白した。そして今では、杏子の斡旋によってM女としてサディストたちに「渇き」を癒していることを……。
 郁子の告白を聞いた御所靖子は、相手をしてほしいサディストの客の正体を明かした。
 それは……。

 真のサディストというのは昂奮するために女を責めるのではない。血に渇くというか、体と精神がそれ無しには生きてゆけないほど、生きている意味を失ってしまうほどの人間をいう。

 際立って美人でもなく、特にスタイルがいいわけでもなく、おまけに若くもない。そんなヒロインが館淳一の筆にかかると、とてつもなくチャーミングに見えてくる。まさに文章のマジックとしか言い様がない。

 この短篇には豊富なディテールが盛り込まれていて、わずかな記述が読者の想像力を刺激して、まるで長篇小説を読んでいるようなコクがある。特に郁絵と杏子の関係など、それだけで一篇の作品になりうる魅力を持っている。
 だけど、この作品の突出したイメージは、物語の最後に登場するサディストの設定にある。作者はそれを「渇き」と呼ぶ。それに呼応するものは、近年の館作品でしばしば言及される「飢え」という概念だろう。
 生殖を目的としないすべてのセックスは変態行為に違いないけれど、ここで描かれる「渇き」と「飢え」の出会いには、どこか崇高な官能性が漂っている。
 長篇化が望まれる一篇である。
                            詩織

《作者より》

 作者にとって、マゾヒストというのは永遠の謎です。
 苦痛を避け快楽を求めて生きるのが人間という生き物の基本的プログラムだと思うのですが、マゾヒストは敢えて苦痛を求めます。自然の摂理に反した、文字どおり「倒錯」した生き物。
 なかでも「真性」と呼ばれるマゾヒストの快楽のメカニズムは、神秘としか言いようがありません。
 この神秘の前には、サディストなど屁のようなものです。(笑)  長年、いろんなマゾヒストと出会って、なぜ、苦痛と屈辱を求めるのかを探ってきました。
 その結論は「分からない」でした。
 いろんな仮説とか理論など理屈を並べてみても、ある人がなぜ苦痛と快楽を求めるようになるのか、それを説明し尽くすことはできません。
 それはもう「業」としか言いようがないものだと思うに至りました。
――というわけで、理屈抜きで、真性のマゾヒストが真性のサディストに出会う物語を書いてみました。

《初出情報》

『渇いた肉契』…………『小説CLUBロマン』2002年8月号                   

《書誌情報》

本書は竹書房より竹書房文庫スーパーラブロマン選集の一冊(SL-47)として文庫判型で刊行された。
デジタルテキストは発売されていない。





ISBN4-8124-1078-9
2002年12月27日=第一刷発行
発行=竹書房
定価=648円(税込)+税

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