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カバーイラスト 妃 耶八
カバーデザイン ヤマシタツトム


失踪

催淫プログラム

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《読者からの解説&感想》

 館淳一作品に長年親しんできた読者なら、ブルゴン商事という会社名を聞けば、さまざまな妄想がわき上がり、興奮し、濡れたり勃起したりしてしまうかも知れない。もちろんこれは作中で描かれる虚構の会社なのだけれど、数多くの館作品に登場することから、夢見山市などと同様に、館ワールドにおける定番の設定として読者に愛され、今や実在の会社のような存在感を醸し出している。そこで展開された淫靡な事件の数々を、みなさんもご記憶のことと思う。
 このブルゴン商事譚は、ある種のサラリーマン小説としても読める作品群であり、会社勤めを経験された読者の方には、独特のリアリティと面白さがあり、個人的にも愛着のあるシリーズである。
 その魅力的なシリーズに、またもや斬新で刺激的な作品が加わることになった。
 本作でブルゴン商事は、赤坂のオフィス街に「ブルゴンタワー」と呼ばれる巨大なビルをオフィスとする巨大企業として登場する。
 最初の頃は確か、食品関係の輸入製品を取り扱う商社という設定で登場したと記憶しているけれど、ついに本作では政府の高官とも関係した総合商社へと成長した姿を読者に示すことになり、長年親しんだ読者のひとりとして、感慨深いものがある。
 物語は、ひとりのOLの失踪事件から始まる。タイトルが示す通り、パソコンに仕掛けられた巧妙な催淫プログラムが原因である。しかしその裏側には、巨大な陰謀が隠されていた。
 この事件の調査に乗り出すのが、近年の作品ではすっかりお馴染みになった赤木室長と猿田探偵の名コンビ、そして館ワールドならではの魅力的な探偵助手が登場する。
 さらにその探偵助手は、自らが守るべきヒロインのOLと、ただならぬややこしい関係になってしまうのである。  そう、これこそが館ワールドの醍醐味!

「ま、待って……、静香さん。いったいどうしたの!?」
 顔をひいて唇が離れた瞬間、ルミ子は叫んだ。
「分からないのッ。なんだかすごく体が熱くなって、その……欲情してしまったの。ああ、こんなの初めて」
 呻くようにして言い、ルミ子の手首を握ると自分の股間へと触らせた。
「うそ!」
 ルミ子はまた叫んだ。パンティの下で男の器官がパンパンに膨れ上がって、先端がゴムの上からせりだしている。しかもテラテラと濡れている。信じられないほどのすさまじい勃起だ。
「女の人にこんなに欲情するのも初めてよ……。何がなんだか自分でも分からないけど、お願い、私に抱かれてッ!」
                                (第五章 催淫プログラム)

   物語は謎のUSBメモリの争奪戦から秘密SMクラブ、そして政府高官まで巻き込んでドラマチックに展開してゆく。アクション・シーンも最近の作品としては多く挿入され、初期の作品群を彷彿させるものがある。そしてクライマックスには大規模な突入シーンもありダイナミックな作品に仕上がっている。
 もうひとつ、忘れてならないのは館ワールドでは定番の悪役としてお馴染みの中原研一が久しぶりに登場することである。どのように登場するかは読んでのお楽しみとするとしても、今回の中原研一、赤木老人に敵ながら高い評価を与えられているところもあり、いつになくキャラクター性の強い人物として描かれているところが興味深い。
 最後に、作者はパソコンやインターネットをはじめとして、デジタル機器の発達とそれによる生活様式の変化に敏感に反応し、先取りしてきた作家だが、本作でもレーザービームを使った驚愕のトリックが使われていて、舌を巻く。物語の最初の頃に紹介される社内の非公開コミュニティ『ブルゴン小町給湯室』の設定も楽しい。こうした細部にまで楽しみが詰まっているところが、知る人ぞ知る館ワールドの魅力なのである。
           詩織

《作者より》

ハードボイルド・アクション・ミステリです。もちろん官能ポルノです。
おなじみ大手商社『ブルゴン商事』を舞台にしています。
まず美人OLが失踪します。どんどん失踪しちゃいます。(笑) ヒロインのルームメイトも失踪し、おまけにヒロインまで謎の男たちに襲われます。
そこに出現したのが、キャバクラ嬢かと見まごうキャピキャピ(古いね)娘。悪漢たちを相手に獅子奮迅の大立ち回りでヒロインを守ります。
なんとキャピキャピ娘は探偵だったのです。ほら、私立探偵猿田の部下だったのです。
しかも彼女は、どこから見ても女なのですが……と、ここまで言えば分かるでしょう。(笑)
謎の勢力がOLたちを誘拐する手口は? その目的は? 彼女たちが連れ去られる先は?
猿田らの必死の捜索に社史編纂室長、とは名ばかりトラブル一切処理係の赤木老人も奔走して、遂に巨悪が姿を現してきます。
当然ながらヒロインも美女探偵も彼らの毒牙にかかるわけですが……。
あとは読んでのお楽しみです。(笑)

《初出情報》

本作品は『蜜は闇に溢れ』という題で『特選小説』2007年10月号〜2008年7月号まで、連載された。

《書誌情報》

本書は二見書房より二見文庫シリーズ(た1-5)として文庫判型で刊行されました。
デジタルテキストは二見書房おとなの本屋さんで購入できます。





ISBN978-4-576-08077-2
2008年7月25日初版発行
発行=二見書房
定価=686円+税

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