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カバーデザイン 松田行正
カバーイラスト 石井のりえ


卒業

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《読者よりの解説&感想》

 私は古書店を経営する40代後半の男性です。もともとは学術書を中心とした目録販売をしていたのですが、店舗を持つと日銭を稼ぐために文庫本や写真集なども扱うようになりました。店舗を持った頃は空前の写真集ブームが始まった頃で、特にロリータ写真集の値段の高さや売れ方の凄まじさは筆舌に尽くしがたいものがありました。
 文庫本の中でも官能小説といえば、フランス書院文庫、マドンナメイト文庫、グリーンドア文庫といったところがよく売れ、ロリータ写真集を多数扱っていた関係で、マドンナメイト文庫、グリーンドア文庫のロリータ系小説が飛ぶように売れました。私も売る側の人間として、何ゆえその商品が売れるのかを知るため、ロリータ系小説はひと通り読んでみました。睦月影郎、吉野純雄、川本耕次など。館淳一さんはマドンナメイト文庫等にロリータ系小説を書かれていましたが、フランス書院文庫に登場してきた『養女』という作品は傑作だと思いました。
 私はこの『養女』という作品を仕入れるたびに一度は読んでから店に並べていたので、何度読んだかわからないくらいです。ちなみに幻冬舎の復刻版『卒業』も同じようにして3回も読んでしまいました(笑)。近年、私も鹿瀬裕介の年齢に近づくにつれ、この小説の心理描写が痛いほどわかるようになってきたのです。
 特に、幼い14歳のゆかりが好奇心いっぱいなのをいいことに、中年の大人の狡猾さで愛奴へと導いていく手法と、一方で良心に苛まれる気の小さなところも良く描けてると思いました。なかでも《三度目の機会から、裕介は十四歳の少女に自分の怒張を口にくわえさせ、舌と唇の愛撫を要求した》というくだりには、何度読んでも興奮し激しく勃起させられてしまうし、ゆかりの処女を奪うシーンも、初めてのアナルセックスのシーンも、ゆかりという少女が愛しくてたまらないという思いにさせられたものです。
 また、その一方で祖父の庄造を、喜久恵・夏子母娘を死に至らしめるゆかりという女の情炎の凄まじさは、館さんの他の作品にも時折見受けられる見事な手法で、幸せな死に顔の祖父と黒こげ死体になる母娘のコントラストも見事だと思います。また親友の緑川美帆をマインドコントロールして、自分に代わる父の愛奴としてフレゼントするというのも、中年の男の悲哀を埋める最高のプレゼントが何であるかを知り尽くしているかのようでした。

 フランス書院文庫としてはかなり早い段階で絶版になったので、まさか三好京三氏に訴えられたのでは……と心配してましたが、単にフランス書院文庫としては内容的に合わないと判断されただけだったようですね。でも、この作品はとても奥の深いもので、何度読んでも味わいのある作品であることは間違いありせん。あえて言わせてもらえるなら私は言いたい、フランス書院文庫で一番の傑作は実はこの『養女』だったのだと。(館さんの作品で一番とは言いません。もっとすばらしい作品を次から次へと書いてもらいたいですから……笑)

                             大阪の古本屋

《作者より》

これは1987年、ぼくの作品としてはフランス書院から2作めに刊行された長編、『養女』の復刻版です。
詳細はリスト1のNo.18を参照してください。若干の表記変更はありますが、大幅な加除はありません。

本作品は、フランス書院文庫初期の長編として、『姉弟日記』とともに、自分では一番好きな作品なのです。
読者のかたにも「印象に残る作品」「もう一度読みたい作品」として挙げていただけるかたが多いですが、絶版されて久しく、デジタルテキストのダウンロードもされませんでした。
この愛すべき作品を新しい読者が触れられないまま眠らせるのがもったいなく、ボランティアのかたのご助力を得てデジタルテキスト化し、自分のページでフリーダウンロードできるようにしていましたが、幻冬舎アウトロー文庫が、『姉と鞭』(もとは『姉弟日記』)に次いで、この作品も装いを新たに復刻してくれました。
 20年ちかくも前の作品ですが、『姉と鞭』同様、内容はまったく古びてはいないと自信を持っています。ご感想をいただければありがたいです。

『姉と鞭』と同じく、気鋭のイラストレーター石井のりえさんが優艶なカバーイラストを描いていただけました。

《初出情報》

フランス書院文庫『養女』(書き下ろし長編)……1987年1月

《書誌情報》

本書は幻冬舎より幻冬舎アウトロー文庫の一冊(O-44-03)として文庫判型で刊行された。
デジタルテキストは発売されていない。





ISBN4-344-40671-0
2005年6月10日=第一刷発行
発行=幻冬舎
定価=533円+税

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