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カバーイラスト 妃 耶八


清純派アイドル

特別レッスン

123

スーパーアイドル姫野リカそっくりのラブドールを抱く――
奇妙な仕事を請け負った便利屋「なんでもボーイ」に働く京太。
「ホンモノの姫野リカを抱きたくない?」と誘われる。
あまりにも美味すぎる誘惑の代償は、いったい何?
芸能界に渦巻く欲望と愛憎の迷宮に切り込む、 問題作家館淳一の超弩級大作!(笑)

《読者からの解説&感想》

 便利屋『なんでもボーイ』で働く桑野京太の、その日最後の仕事場所は、夢見山市にある高級マンション『カーサ・マロニエ』にある『マロニエ企画』だった。
 仕事を終えた京太に、女社長は意外な依頼をした。
 ラブドールと呼ばれるダッチワイフの体験モニターになってほしいというのだ。
 シャワーを浴び、奥の部屋に通された京太が見たものは……。
「姫野リカ……ちゃん? ま、まさか……」
 それは京太の憧れの清純派アイドル姫野リカそっくりに作られた、精巧な人形だった。
 まるでホンモノのリカを抱いているような錯覚に陥りながら、京太はリカ人形の中で果てて行く。
 モニター試験に合格した京太に、女社長は次なる仕事の依頼をした。
 女装をして姫野リカのマンションに潜入して、リカのセックス相手になれというのだ。
 ホンモノのリカを抱ける!
 それはまさに夢のような仕事だった。
 しかしそこには、意外な落とし穴が待ちかまえていた……。

「入れて、ブスッと入れて、リカを殺して〜ッ」
 狂ったような甲高い声をあげまくりながら十八歳の美少女は、たぐい稀な感じる肉体を悶えさせ、のしかかってくる京太の肉槍を受けいれる。
「犯ってやる」
 唸りながら女装のまま、パンティだけを片足にひっかけた京太が、濡れ濡れの肉唇をこじ開け、愛液で煮えたぎるような柔肉に穂先を突きたてた。
 ほとんど抵抗なくめりこむ凶悪な器官。
「ひッ、ひいい、あうー……」
                (第三章 騎乗位のスーパー・アイドル)

 館ワールドでは珍しいアイドルものの長篇。
 またこの作品は『媚肉の報酬』(ベストロマン文庫)でお馴染みの『なんでもボーイ』京太シリーズ(ただし、『媚肉の報酬』での京太は、「千京太」という名前になっている)の姉妹篇としても楽しめる。
 便利屋という職業は、昔からあるものだけれど、現代の都市生活にまつわる様々な問題を解決する万能選手として、新たな脚光を浴びている。
 そしてこの職業は、依頼人のプライバシーをのぞき見ることが出来るという、魅力的な側面を持っている。
 本作はその便利屋という職業を効果的な導入部として使いながら、人形とのセックス、女装、そして現役アイドルとの変態的なセックス三昧へと雪崩れ込んでいく。
 いわゆる「巻き込まれ型」のストーリー展開に、次々と意表を突く趣向が凝らされていて、アイドルとのセックスという非日常的な世界を、めくるめく陶酔と、奇妙なリアリティで描ききっている。
 突拍子もない物語に見えながら、不思議なリアル感があるのは、作者が芸能記者をしていたという経歴と無関係ではないだろう。
 単なる夢物語とは感じさせないその迫力は、その世界の空気感をしっかりと捉えた作者ならではの凄みを感じさせる。
 読者はまた、姫野リカに、自分の好みのアイドルをあてはめて読むという愉しみもあり、まさにサーヴィス満点の作品。
 ラブドールの「リカ」というネーミングはもちろん、「リカちゃん人形」からの引用、だね。
 マニアの方は、これに江戸川乱歩の傑作短篇「人でなしの恋」を重ね合わせてみるのも一興かも……。
 ここでは言えないけど、後半の展開も圧巻です。

                                詩織

《作者より》

ぼくの経歴のなかに「芸能記者」とあるのを気付かれたかたがいると思います。
某出版社の芸能誌『週刊M』という週刊誌(今はない)に4年在籍していたのは紛れもない事実です。 ライバル誌は『週刊H』、その他『女性自身』『女性セブン』『週刊女性』などの女性誌。
まあ今でいうワイドショーのレポーターの活字版。芸能ゴシップを追い求めて東奔西走の毎日でした。 「なんというくだらないことをやっているのだ」と悩みつつ、しかし華やかな外見の背後に蠢く人間模様の怪しさ暗さに惹かれて、ドロドロの芸能界裏面を這いずり回っていた若き日の体験と回想がここに凝縮されている――なんてことはまったくありません。(笑)

古くからの読者はお気づきのように、ぼくの作品のなかで芸能界が描かれるのは希有です。
芸能記者を辞めてからも、二十年近く、芸能誌アンカーマンとしてトップ記事を書いてきました。ですから芸能界やスターにまつわる「秘密」はイヤというほど目にし耳にしてきました。よって題材は山ほどあるんです。
しかし、どうも芸能界は書きにくい。あまりにも「書けないこと」「書いてはいけないこと}(そもそも知られてはいけないこと)が多過ぎるのです。それ以前に、かかわったスターは自分の家庭のような気がする。誰も自分の家庭のゴタゴタは言いたくない隠したい。それと同じような感覚ですかね。
実際、芸能界とは無縁になった今でも、時おり「×××のことについて、本を書く気はないか」など、過去につながりのあった人から声がかかります。「今なら話せるだろう」と言われても、すべて断っています。己に課した守秘義務は守りたい。(笑)
しかしまあ、これぐらいはいいだろう、と書いてみたのがこの作品。

スターは虚像と実像の落差がことの他大きい人物が多いのです。これはスターを作りあげるメカニズムが根本的にそういう機能を持っているからで、実像を希薄にして虚像を濃厚にすることで、虚像がリアリティを持つ世界なのです。
いや、これを読んで「清純派アイドルってみんなこんなもの?」と思われても困りますが、こういったアイドルも数多くいて、プロダクションやマネージャーは実像を知られないように汲々としていることは、今も昔も変わりません。
芸能記者はまずアイドルの虚像と接し、恵まれた者だけが実像と接することになります。
その実像のほうがもちろん人間的です。たとえ作られたイメージとの落差が大きくても、実像のほうが面白いし、愛すべきものであることがふつうです。
この実像を伝えられる優れた記者、優れた媒体が無い、というのが芸能界の悲劇でしょう。いや、虚像プロデューサーから見れば、あっては困るから存在できないのですが。(笑)
まあ「こういうことがあっても不思議のない世界なんだ」と思って、かつて芸能記者だった作者の作り上げた「虚構」の世界を楽しんでください。(笑)

末尾に「この作品は書下ろし」です、とあります。
これは半分正しいけれど、半分ウソです。(^_^;)
『G!』という男性向け月刊誌に連載されていた「便利屋『なんでもボーイ』京太シリーズ」がもとになっています。
この連載は、どうもある理由から編集部に嫌われたようで、連載なかばで突如中断の憂き目に遇いました。仕方なく後半部を執念で書き上げ、300ページを越す長編として完成させました。
ですから打ち切られた部分からあとが「書下ろし」ということです。
読者におかれましては「なるほど、これでは打ち切られるのも当たりまえだ」という部分を探すのも、また一興かと思います。(^_^;)

《書誌情報》

本書はマドンナ社よりマドンナメイト文庫シリーズ(た1-40)として文庫判型で刊行された。
他の媒体では発表されていない。





ISBN4-576-03222-4
2003年12月10日=第一刷発行
発行=マドンナ社
発売=二見書房
定価本体686円+税

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