実寸大表紙へ

カバーイラスト 浜田 和


女神たちの館

マドンナミストレス・スペシャル

121
《収録作品》

『姉はミストレス』(中編)
『フェチなエッセイI 美少年論 いじめられる小林少年』
『女神の双頭具・完全版』(長編)
『フェチなエッセイII 理想の“強い女”』


史郎がセーラー服を身に付け、美少女に変身したこの日が、
愛しい姉・紀夢から受ける最後の“調教レッスン”だった。
バラ鞭が白い肌を赤く染め、悦楽のエキスを爆発させる――。
ミストレス小説の金字塔『女神の双頭具』の完全版、
エッセイ他、倒錯の官能を一冊にまとめた永久保存版!

《読者からの解説&感想》その1

『女神の双頭具』――マニアの底力

《「ふーん、綺麗に剃ってあるのね。これが大きくなったら見ものだとレジーナは言ってたけど……」
 彼の下腹部を見る例かは舌なめずりしそうな表情だ。
(中略)
 若者の、とても男とは見えない裸身に白いブラジャーとパンティを着けさせると、年上の黒衣の女は、ドレッサーの前に彼を座らせた。》

 とんでもないお話でございます。
 主人公の敏彦は、インターネットでレジーナと知り合い、彼女の専属奴隷に志願致します。試験(肛門凌辱、鞭打ち等々)に見事合格した彼は、女装美少年マゾ奴隷同士でもイチャイチャしつつ、レジーナサマの僕(しもべ)として、喜びの日々を過ごす……。
 ふつうの女性にとっては、縁もゆかりもない世界。なのに面白いのです。次から次へと展開する驚くべき官能シーン、とどまることを知らぬ想像力に、わたくし感嘆いたしました。それらを実行したところで、わたくしが快感を覚えるかといえば恐らく否でございましょう。しかし、コートの下は光沢のある黒のランジェリーだけ、という出で立ちで映画館に現われ、敏彦を嬲りつくすレジーナ様の颯爽たるお姿には、忘れがたいものがございました。マニアの底力を感じる作品です。

 奈河静香(月刊誌『UNО!』1998年7月号、『官能小説は、こうお読みあそばせ』より)

――この作品に対する読者の感想は、『女神の双頭具』を参照してください。

《読者からの解説&感想》その2

「姉はミストレス」

《今晩、卒業調教。衣裳はベッドの上に》
 部屋に行くと、白い長袖のセーラー服と紺の襞スカート、そして白いキャミソールとブラジャー、パンティ、ルーズソックスが用意されていた。
 それらを身につけ、史郎は女装奴隷・詩夢として、姉・紀夢の帰宅を待った。

 もしも実の姉がSMクラブの女王様だったら、あなたならどうする?
 姉と弟という関係は、館ワールドでは最も多く登場する関係だけど、作品ごとに様々な趣向が凝らされ、ひとつとして異口同音を感じさせないのはさすが!
 本作では、主人公が姉の調教を待つ間に回想する少年時代の想い出、そして姉が女王様であることを発見する過程が、丹念なディテール描写によって浮かび上がっていくところが特に素晴らしい。
 そう、もしもこんなお姉さんがいたなら、あなたもきっとセーラー服を着て、調教を待つ気持ちになるに違いない。

フェチなエッセイ(1)「美少年論 いじめられる小林少年」

  館ワールドの大きな特徴のひとつである「シーメールもの」の原点について作者自らが語った興味深いエッセイ。
 江戸川乱歩との共通点は、美少年の女装という点だけではなく、実は「屋根裏の散歩者」などに顕著な覗き趣味、もちろん「陰獣」の鞭、そして「人間椅子」の触覚による快楽など、数多く見いだすことが出来る。
 館淳一こそ、江戸川乱歩の正統な後継者である、と言ったら、館さん怒るかな?
 あ、館作品全体に仕掛けられた探偵小説的趣向も、忘れちゃいけません。
 いつか『館淳一 官能ミステリ傑作選』なんてアンソロジーが編まれたらステキだなって思います。

「女神の双頭具」

 一次審査は、“シネマ・レベル3”というミニ・シアターで行われた。
 女装趣味のある敏彦は、パソコン通信で知り合ったレジーナというサディスティンに誘われ、彼女の専属奴隷になるための試験を受け、映画館の女子トイレでアヌスを犯され、聖水を飲まされる。
 数日後、レジーナからの電話で一次審査を通過したことを知らされた敏彦は、指定された酒場“穢夢”で、レイカという女性にセーラー服を着せられ、ヴァンに乗せられ、いずこかへ連れられて行く。
 ヴァンにはすでに先客がいた。敏彦同様にセーラー服を着せられたひろ美という女装少年だった。ふたりは、これからレジーナの専属奴隷の座をかけて競うライヴァル同士だった。
 ふたりの女装美少年は古びた洋館の中に連れ込まれ、レジーナ立ち会いのもとで、女医・令子によって徹底的な身体検査を受ける。
 婦人科診察台の上で下半身を晒し、肛門の奥まで覗かれる過酷な診察に耐えるひろ美・・・。
 続いて敏彦が診察台に上げられる。
   アヌスで感じることを見抜かれた敏彦を見ながら、レイカがレジーナに囁いた。
「この子たち見てて、さっきからムラムラしてるの。精液検査させるのなら、私にやらせてくれない?」
「トコロテンで出させるというの?」
「そういうこと」
 レイカがTバックショーツを外すと・・・。

 女装版『O嬢の物語』とでもいうべき傑作。
 クライマックスの壮絶な鞭打ちシーンはまさに絶品!
 読者の内なる被虐願望を刺激する禁断の書でもある。
 この作品を第一作とする二見書房のMM(マドンナ・ミストレス)文庫は、残念ながら数冊で打ち切りとなったが、姉妹篇ともいうべき『妹の肉玩具』ともども、非常に密度の濃い仕上がりになっており、盛り込まれたモチーフの数々は、その後の館作品で趣向を凝らして変奏されることになる。
 また、プロローグで示された印象深いシーンは、ラストで驚愕の展開を見せて、館世界のもうひとつの重要なモチーフへと繋がって行く。

(ぼくは、ここで、この人によって鞭打たれるために生まれてきたのかもしれない。
だったら鞭で殺されても、それはぼくの運命だ。ぼくがこの世に与えられた役割を果たしたことになる……)                (第八章 最終試験)

 個人的に館淳一ベストテンをセレクトするなら、間違いなく上位にランクされる作品であり、傑作と呼ぶにふさわしい作品である。
 今回、このようなかたちで再刊され、新たな読者を獲得することを素直に喜びたい。
 やっと時代が館淳一に追いついてきたと言うべきだろうか?
 いやいや、この作者は今なお読者の意表を突くかたちで、さらなる官能の領域を広げているのである。

フェチなエッセイ(2)「理想の“強い女”」

 (1)と対をなすエッセイで、ここでは理想のミストレスについて語られる。
 館作品に、日本的な陰湿さがないのは、少年時代に観た外国映画の影響であることがうかがえる。
 そして興味深いのは「メカニズムが複雑なものをやすやす使いこなす女は、ぼくにとって『強い女』だ」という部分。つまり「精神的に強い女」の系譜。
 館作品に女性読者が多いのも、ここらへんに秘密、というか、秘訣があるのかも?

                          詩織

《作者より》

 この前に出たマドンナミストレス・シリーズ『女神の快楽玩具』がミストレス・ファンに歓迎されたようで、編集者から「次の作品は特別編集版として、複数作品を収録したものにしたい」という注文が素早く伝えられました。
 そこで中編+長編の組合わせにして、長編は『女神の双頭具』を再録していただくことにしました。
 なぜ『双頭具』を選んだか、その経緯については、作品の末尾にこう書かせてもらいました。

  1995年、マドンナミストレス文庫の第一弾として書き下ろしたこの作品は、作者としても非常に愛着のあるものです。多くのかたから熱烈に支持され、未だに「あの作品をもう一度読んでみたい」「“伝説”の作品をぜひ読んでみたい』という声が編集部にも届いていると言われ、今回、この作品に新しく手を入れ、完全版として収録することにしました。皆さまの渇きを癒していただけたら、この上ない喜びです。(著者)

 時期尚早、未だミストレス系作品の読者層が熟していなかったためか、この時に書き下ろした『女神の双頭具』と『妹の肉玩具』は、シリーズがはやばやに休止したため、ごく一部の人の目にしか触れることなく消えてしまいました。
 それが心残りで心残りで、「あの2作に再び日の目を見させるまでは死んでも死にきれない」と思っていたところに、思いがけなくその日が到来したことは、嬉しいことです。
 前作を読むことが出来なかった人が多くこの作品を読んでくれますように。

   中編『姉はミストレス』は、1999年6月に発行されたミストレス専門誌『カルメン』第一号(桜桃書房刊)に発表した短編、『姉と弟・淫らな奸計』を大幅に書き換え、加筆したものです。
 ミストレスの姉と同居しながらしだいに魅了されてゆく弟の姿を描いてみましたが、このお姉さんは、これまで登場したどんなミストレスよりも「人間臭い」女王さまでしょう。(笑)

「女王さま」と呼ばれる女性たちと接してみて得た体験をもとに、なるべく等身大の女王さまを描いてみようという計画でしたが、その試みは成功したでしょうか。

 エッセイ2本は、女装する美少年をなぜ描くかというテーマで「美少年論」を、ぼくが理想とするミストレスはどのように生まれたかというテーマで「強い女論」を書きました。いずれもかつてホームページで発表したものに手を加えたものですが、未だ語ったことのない作家の秘話も含まれています。
 しょうもない個人的な話ですが、楽しみながらぼくの困った?性癖を理解していただけたら幸いです。

 なお「読者の感想」その1には、かつての月刊誌『UNО!』が文庫本特集をやった際、官能分野でとりあげて紹介してくださった奈河静香さんの評が、作者としても「なるほど」と思う部分が多かったので、転載させていただきました。
 奈河さんは『小説新人賞はこうお獲り遊ばせ〜下読み娘の告白』(飛鳥新社)の著者です。

   奈河さんの連絡先をご存知のかたはご教示くだされば幸いです。

 

《書誌情報》

本書はマドンナ社よりマドンナメイト文庫マドンナミストレスシリーズ(た1-39)として文庫判型で刊行された。
『女神の双頭具』は同じタイトルで1995年、マドンナメイト・Mシリーズとして文庫版で刊行されている。著作リスト1、ナンバー71を参照のこと。





ISBN4-576-03099-X
2003年6月10日=第一刷発行
発行=マドンナ社
発売=二見書房
定価本体743円+税

トップへ | 著作リスト1へ