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カバーイラスト 浜田 和


美肉狩り

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《読者からの解説&感想》

 期限は二週間!
 その間に携帯電話だけを使って十人の女性をナンパする。
 ブルゴン商事の営業マン・仙石藤太は、リストラを賭けた上司の「美女狩り指令」を受け、慣れない携帯メールを打ち続ける。
 成果のあがらないまま四日が過ぎ、やっとゲットしたのは、ジュリと名乗る看護婦だった。
 しかしもうひとつの難問があった。
 ナンパ成功の証拠に、相手のヌード写真を撮らなければならないのだ。
 藤太は見栄も外聞も捨て、土下座してジュリにたのみこんだ。
「どうしてこんな頼みをしたのか、それだけ説明させてくれ!」
 事情を聞いたジュリが言った。
「だめよ、諦めちゃ! いいわ。撮らせてあげる!」
 こうしてジュリの協力を得た藤太は、彼女のアドバイスでフェティシュ系サイトにアクセスし、「ぬれぱんちゅ」と名乗る女性と出会った。
 通称「ぬれ」は、痴漢願望のある女性だった。
 満員電車の中、「ぬれ」と密着した藤太の指が、彼女のスカートに伸びる。
 果たして藤太は賭けに勝てるのか?

「おれのエンジンも充分にあったまった。では、二人で天国まで飛ばそうか」
                        (第四章 淫らな強制絶頂)

 携帯ナンパという新風俗を取り入れた意欲作。
 主人公は館ワールドでは御馴染みの「ブルゴン商事」の社員。
 ブルゴン商事が登場する作品には『オフィス狩り 淫虐の性獣契約』『美人社長 肉虐の檻』など、傑作が多いが、本作も例外ではない。
「ブルゴン商事もの」の魅力は、一種のサラリーマン小説として楽しめることと、ミステリ的手法が効果的に張り巡らされているところにある。
 本作には、いわゆる犯人探しの趣向はないが、アイリッシュ(=ウールリッチ)が得意としたタイムリミットのサスペンス(『幻の女』とか『暁の死線』とか、ね)が効果的で、作品全体に大きなうねりを与え、主人公の愛すべきキャラクターと相俟って、一見、女性遍歴を描いた連作形式のように見えながら、作者のストーリーテリングの見事さに酔いしれる一篇である。
 一期一会の出会いと別れ、そして意外なかたちでやって来る感動的なラスト!
 官能小説で感動なんかしたくないって?
 そういう人にはこう言ってやればいいわ。

「死に対抗するには生しかない。生とは何か。それはセックスなんだよ。セックスすることで男も女も生きるエネルギーを得て、人の死に打ち勝つことができるんだ。ウソじゃない。試してごらん」
                       (第四章 淫らな強制絶頂)

 ってね!
                         詩織

《作者より》

『日刊スポーツ』紙に連載されたものをまとめた長編です。
 同紙には1997年に『官能作家の電脳工房』全106回を連載しました(これはフランス書院から『黒下着の人妻・秘密の倒錯通信』(092)に纏められました)。
 ですから同紙には二度目の連載となるのですが、今度は難しい注文でした。
「いま話題の『出会い系サイト』で女性をゲットしてゆく、実録ふうのものを書いてくれ」と頼まれたのです。
 前回はインターネットを駆使する風俗ライター、堂島彰をデビューさせたので、再び彼を登板させようかと思いましたが、実はこの作者、何が苦手といって携帯電話(今ではケータイと書き、話すのが一般的ですが)ほど苦手なものはありません。(笑)
 パソコンを駆使すれば出会い系サイトなどなんの苦もありませんが、携帯を駆使……というわけにはなかなかゆかないのですね。どうもあの小さなボタンをポチポチ押すのが面倒で、携帯でメールを打つとなると気が遠くなります。(笑)
 まあ、もちろん必要がある時は携帯でメールのやりとりもしますが、出来れば勘弁してほしい。
 もともと自分の声にあまり自信がないから、テレコミ系は敬遠していたんですが、そうも言っていられず、まあ、いろいろ取材しました。協力してくださったかたがた、ありがとう。
 ところで、スポーツ新聞のエッチなページを楽しまれる読者層について教えてもらうと、メールでナンパなどというところからかなり離れたところにいる人々が多数だということでした。「携帯も持っていない、もし持っていなくても電話の送受信機能しか使えない」という人ですね。
 それならば、そういった読者そのもののような、携帯に縁の無い人物を主人公にしたらどうかと思いました。
 その結果、携帯もパソコンも、メカに関してはまるでダメという、中年目前の冴えない独身男性サラリーマンを主人公としました。そんな男が、成り行きで上司と賭けをしてしまうのです。その賭けとは……、
「携帯だけを使って二週間で十人の女性をメールナンパする。達成できたら重大なプロジェクトを任せてもらえるけれど、できなければクビ」
 しかも厳しい条件がつきます。援交など金のからむ出会いはダメ、相手はそれなりに「美人」であること、さらに、ベッドインしたという証拠に、ヌードをデジカメで撮影してくる――という三つのハードルをクリアしなければなりません。
 主人公は「ウソが言えない」という性格。しかも外見はぜんぜん冴えないときている。しかも素人の女性を口説き落としたことがない。(笑)
 そんな男が、賭けに勝つことが出来るでしょうか?
――というわけで、この作品はぼく同様、携帯が苦手、調子よくウソをつくことが苦手、おかげでどうも女性に縁が無い――という男性諸君に捧げる涙と笑い(笑)の作品なのです。
 もちろん、これを読んだからといって携帯ナンパが成功するということはありません。でもまあ「新しい出会い」を求めるヒントにはなるかもしれません。(笑)
 館淳一作品にしては、肩のこらない仕上がりですのでリラックスしてお読みください。

《初出情報》

原題『濡らし打ち親指ハンター』……「日刊スポーツ新聞」(ニッカン)2001年11月29日〜2002年5月1日
全150回


《書誌情報》

本書はマドンナ社よりマドンナメイト文庫シリーズ(た1-37、通算No.524)として文庫判型で刊行された。




ISBN4-576-02152-4
2002年10月10日=第一刷発行
発行=マドンナ社
発売=二見書房
定価本体524円+税

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