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カバーイラスト 浜田 和


マドンナメイトスペシャル

甘媚な儀式

116

《収録作品》

『姉・縛られたい』(中編)
『硝子の寝室』(連作短編)
第一話『檻』
第二話『鏡』
第三話『柱』
『僕が女性の下着をつける理由(わけ)』(短編)
『透きとおる愛』(短編)
『見えざる手』(短編)
『詰めこまれる欲望――快楽梱包術』
『姉と弟・肉欲試験』
『兄貴の愛人』
〜悩んでしまうあとがき〜


《読者からの解説&感想》

待受中

《作者より》

マドンナメイトではこれが36冊めの刊行になるのですが、「“ザ・ベスト・オブ館淳一”のような個人アンソロジーを作ってみませんか」といわれて編んだのが、この中短編集です。
「この機会に」と、これまでお蔵入りしていた“幻の短編”に日の目を見せてやりたいと思い、当ホームページにも掲載していた『快楽梱包術』なども収録させてもらいました。
しかし……、お蔵入りしていたにはそれなりの理由があるのですね、やっぱり。(笑)
そういうものを集めてしまったこの作品集が読者にどう受け取られるか、心配です。少し悩んでしまいました。
その悩みを「あとがき」(考えてみれば著作に「あとがき」を書いたのは、116冊めのこの本が初めてなのです!)に記したので、ここに転載します。


悩んでしまうあとがき  館 淳一

『姉・縛られたい』は書き下ろし中編です。
 女のきょうだいがいなかったぼくにとって、姉と妹は永遠の憧れです。ですから美しい姉、かわいい妹をもって、悩まされる若者を書くのが好きです。
 縛るのはもともと不器用だし面倒くさがり屋なので苦手なのですが、縛られた女性というのは見るのは好きです。「女は縛られて美しくなる」という言い方がありますが、それは本当です。緊縛された美女がいなければぼくの世界は灰色だ。
 といって縛られたくない女性を無理やり縛ってまで観賞したいとは思いません。「縛られたい」という女性が縛られてくれれば、これは縛られるほう、縛って観賞するほう、両者それぞれにハッピーです。そして縛られることが大好きな女性は、少なからずいるのです。それはあなたの周りにいるよく知った人かもしれません。
 というわけで、好きなもの二つ(姉と緊縛)を組み合わせてハッピーな物語を語ってみたいというのが、この中篇の試みです。まんじゅうも好き、ケーキも好きという作者がまんじゅうケーキという新しいお菓子を作ろうとしたと思ってください。ぼくなりに工夫したスパイス味があなたのお口に合えばよいのですが。

『硝子の部屋』はミニ短編というかプチ短編というか、それの三部作です。
 特選小説という雑誌の女性編集長Sさんから「そんなにエッチでなくてもいいんですが書きたいものを」と言われて書いてみたのが『檻』『鏡』『柱』。それぞれの対象物に魅せられ自分を変形させてゆく男女を描いてみました。
 性的な描写は、ぼくの作品にしても抑制されています。確かにストレートなエロ表現ではないけれど、主人公たちの隠された願望が噴出してゆくところに、奇妙なエロは十分に感じられるのではないでしょうか。
   (初出=「特選小説」1997年4月号〜6月号)

『ぼくが女性の下着をつける理由(わけ)』
 ランジェリーショップの前を通ると足が止ってしまいます。それぐらい女性の下着、ランジェリーは大好きです。なぜランジェリーが好きか、という部分を追及してみた作品が多いのですが、そういう男性を女性から見ればどうなのだろうか、という問題を考えてみたくなり、好きな「ランジェリーショップもの」の一つとして書いてみました。
   (初出=「小説CLUB」1994年2月号)

『透きとおる愛』
 この本にはどういうわけか、発表時の編集者を悩ませた作品が多く収録されています。
 この短編もその一つでしょう。なにせ中年男にストーキングされる美少年というお話です。まあ、美少年を玩ぶのもぼくの好きなことなので。
 男と男ですから官能小説としては掟破りです。実際、男女のセックスは一度も描かれていません。これはぼくのよく使う手なんですが、あなたは嫌いでしょうか。まあ読んでみてください。
   (初出=「特選小説」2000年5月号)

『見えざる手』
 ぼくはミステリーが好きで、作品のなかには必ずミステリー的な要素を含ませることにしているのですが、実はホラーもSFも好きです。
 官能とSFの組み合わせはかなり難しく、官能の側からは歓迎されないことが多いのですが、なんでもやってみたくなる性分で、SFホラーのようなものは『霧魔の別荘』という傑作短編(自分で言うか)があります。この作品は殺人の企図をからめた、少しも怖くないホラーです。楽しんでいただけると嬉しいです。
   (初出=「特選小説」1999年12月号)

『詰め込まれる欲望・快楽梱包術』
 これはぼくのオフィシャルホームページで無料ダウンロードしている短編なので、読まれたかたもいるかもしれません。実は館淳一お得意「編集者を悩ませる作品」の代表作みたいなもので、女性は登場しません。セックス描写はありません。おかげで短編集にもアンソロジーにもお呼びがかからず長いこと店晒しにされていた不憫な作品です。
 ぼくは十分にエロだと思うし、読まれたかたで「面白い」「感じた」という声をメールなどで寄せてくださったかたも多いのですが、まあ……官能小説としては主流のテーマではありませんからねえ。まあ当たり前のエロに食傷された時はお口直しにどうぞ。
   (初出=「小説CLUB」1993年4月号)

『姉弟・肉欲試験』
 館淳一といえばMモノだ――と思われているかたも多いでしょう。マドンナメイト文庫にはかつてMシリーズというのがあり、その冒頭を飾った『女神の双頭具』や『妹の肉玩具』などは自分で言うのもなんですが、そっちの方面ではおおいに喜ばれた作品でした。
 ある女装専門誌に書いたミニ短編が核になっています――と書けば、この短編の内容も分かりますね。サディスティックな姉の奴隷として仕えてきた弟が新たな運命の女性に出会うお話です。痛いのはいやだという人には向いていないかもしれません。
   (初出=「小説CLUBロマン」2000年10月号)

『兄貴の恋人』
 これもまた「編集者泣かせ」の代表みたいな作品です。三人の登場人物、女性が一人も出てきません。ぼくが官能雑誌の編集者だったら、やはり泣いてしまうでしょう。
 でもご心配なく。エロの部分は自信を持って書きましたから――って、そのケが無い人はやはり無理だったかしら。
   (初出=「小説CLUBロマン」1998年9月号)

――と、ここまで収録作品を解説してみて、思わず頭を抱えたくなりました。
「館淳一のすべて」というような形で一冊の作品集を作ってみないか、と声をかけられたのを機に、これまでしまいこまれていた作品たちに光を当てて、館淳一という作家の全体像を見てもらいたい――と思ったのですが、こうまで「編集者泣かせ」の作品がずらりと並ぶとは……。願わくば「読者泣かせ」の本にならないことを願うばかりです。
 数年前になりますが、大先輩にあたる作家のかたが、たぶんぼくのあっちにもこっちにも、いろんなジャンルのいろんな傾向の作品を書くことに呆れたのでしょう、「何か得意分野をしぼって、狙いを定めたらどうか。きみは看板が無いんだよね」と言われたことがあります。まったくそのとおりで「看板がない」と言われたらグーの音も出ません。
 それは読者のほうもそうだろうと思います。この前読んだ作品と今度の作品、全然、傾向が違うので驚いて投げ出したかたも多いのではないかと思います。本来なら別のペンネームで書くべきものがこれまで一つのペンネームで、ついに百十数冊を越して刊行されました。混乱が生じ、評価もずいぶん分かれたと思います。とても官能ではない、エロでもない、妙な作品群もずいぶんありましたし。
 それでもなぜか「館ワールド」という言葉が生じ、熱心に読んでくださる愛読者のかたに恵まれてきたのも事実です。今度は何を書くやらという奇妙な作家におつきあいくださった読者は、ではどの部分に共通項を見いだしてくださったのでしょうか。
 それは多分、ランジェリーに関する思い入れの部分ではないかという気がします。ぼくは登場人物には必ず――女性ばかりではなく――美しくセクシーなランジェリーを纏わせます。ヒロインは実は人間ではなく、ランジェリーなのかもしれないと、書きながら思ってしまうこともあるのですが、ランジェリーというものの魅力、あるいは魔力に捕らわれた人が「館ワールド」を何度も訪問してくださるのだと信じています。
 そのランジェリーに捕らわれたぼくの情念を映像とするなら『硝子の寝室』に使わせせてもらった画像が一番よく表現されたものといえるでしょう。「あ、いい画像だな」と思われたかたは、ぜひぼくのホームページ(館淳一オフィシャルホームページ=http://www.ient.or.jp/~tate/Japanese.html/ プライベートホームページ=http://homepage2.nifty.com/Grumpy/)にいらしてください。ぼくが愛するたくさんのランジェリー画像がお待ちしています。
          (ちなみに収録画像の撮影は館淳一、モデルはCee)


《書誌情報》

本書はマドンナ社よりマドンナメイト文庫シリーズ(た1-36、通算No.657)として文庫判型で刊行された。




ISBN4-576-02103-6
2002年7月10日=第一刷発行
発行=マドンナ社
発売=二見書房
定価本体657円+税

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