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カバーイラスト 浜田和


亜梨紗・二十五歳

肛虐に啼いて……

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「ああ……」
 パンティをくぐらせて、自分の秘唇に伯父の手が触れたとき、
亜梨紗は腰をくねらせて啜り泣くような声を洩らした。
乳房はクリップ責めで触られているが、
秘唇をまさぐられたのは生まれて初めての体験だ。
「濡れているな、亜梨紗。おまえは目覚めたのだ。
自分の中に潜んでいるマゾヒズムという怪物に気づいたということだ。」
いまや便意は耐えがたいほどの苦痛となって亜梨紗の腸を絞りあげていた。
ギュウウ、グルル。
「どうだ、亜梨紗」
「誓います、伯父さま。亜梨紗は奴隷になります」

《読者からの解説&感想》その1

「こんなSM小説もあるのか・・・・・・」と読後に思いました。
内容は読んでいない人には教えたくないなあ。何を書いてもネタバレになってしまうような気がする。
 あの、赤ワインの裏ラベルにスミレの花の香りとか、バニラのような匂いとか、チョコレートのようなコクとか書いてあるではないですか。
 ほんとかよ、って思って飲んでみると確かにそういう味がすることってありますよね。
 この小説も調教という王道を扱ったSM小説なのに、様々な香りを楽しめます。
 読後は、しばらくこの酔いを楽しみたいとボーっとしてました。
 特に女性読者におススメですぅ。へんな言い方だけど、イイ話なんすよ。

 

            BB

《読者からの解説&感想》その2

解説は、<作者から>で館さんがお書きなので、感想だけにしますね。
この小説を読んで、チコはふと学生時代のことを思い出しました。
チコも小学3年から中学3年まで6年間某私立高校に合格するために通塾した体験とあまりにも似ているのです。
テストの成績で間違った数だけお尻を定規か竹の棒でのお仕置き、宿題も大変で、忘れると問題数だけお尻叩きというきびしさで、泣きながら通った経験があります。
チコは家庭でのお仕置きはなかったから、塾でのお仕置きは厳しく感じた。懐かしいわ。でも、全員希望の高校に合格した時は今までの厳しさを思い出に置きかえることができた。
『亜梨紗〜』は、チコが夢中で館淳一ワールドに引き込まれた作品です。
ともかく面白かった、夢中で読んでしまった一冊。
館淳一の作品の中で一番好きな小説がこの本です。

            ドクトル・チコ

《読者からの解説&感想》その3

 神崎亜梨紗は、久しぶりに故郷の汐見市へ帰って来た。
 亡くなった伯父・健吾の霊前に拝するためだった。
 高校時代、塾の講師をしていた伯父に、個人授業を受けた。それはスパンキングや全裸での拘束という、まさに調教というべきものだった。だが、そのおかげで亜梨紗の英語力は格段に伸び、今はこうして国際線のスチュワーデスにもなれた。
 思い出の場所で、当時をなつかしむ亜梨紗。
 その前に現れたのは、健吾の養子・俊介だった。
「亜梨紗姉さんはぼくの理想の女性だったんですよ。最初にこの家にやってきた時から」
 俊介の語る意外な真相。
 そして椅子に縛りつけられた亜梨紗は……。

「濡れているな亜梨紗。おまえはこのところよく濡れる。服を脱いだ時から濡れて縛られるとさらに濡れる。放置授業の時は、終わるまでに大洪水で、いつもお洩らししたのではないかと思うほどだ。どうしてそういう体になったか分かるか。おまえは目覚めたのだ。つまり自分の潜んでいるマゾヒズムという怪物に気づいたということだ。この怪物が目を覚ましたらもう助ける余地はない。おまえは一生、それによって苦しめられる。だがこいつはふつうなら絶対味わえない快楽をも与えてくれる怪物でもある」
                      (第五章 服従の奴隷契約書)

 まるで緻密に構成された一幕ものの舞台を観ているような、見事な作品である。
 ドラマは終始、亡くなった伯父の書斎で展開し、回想シーンが織り込まれてゆく。
 そして圧倒的なラストシーンに向かって、読者の興奮も高まっていくに違いない。
 と同時に、この作品はミステリとしての味わいもある。
 だから詳しい紹介はネタバレになってしまう。
 もちろんこれは官能小説だから、そのエロティックな仕掛け、描写もてんこ盛りになっている。
 わけても興味深いのは、伯父の体罰による躾、教育、調教の部分だ。
 現在の教育体制では忌避される体罰だが、これを読んでいると、その有効性にもっと注目してもいいのではないかと思ってしまう。
 もっとも、体罰が病みつきになって、それなしには生きていけない子供たちが増えてしまっても問題、かな?
 直接的なセックス描写よりも、そこに至る過程に重きを置くのが館作品の特徴であるが、本作でもその趣向は遺憾なく展開されている。
 まるで、ラベルのボレロのように……。

 

そしてラベルのボレロは掉尾のフレーズに壁も崩れるばかりの音量で突入していった。
「あううう!」
 音楽にかき消されそうだったが、耳元でせっぱつまった呻き声がした。指の刺激はさらに強まり、亜梨紗はイッた。
「あーッ!」
 その瞬間、また呻き声が聞こえ、次の瞬間、演奏は終わった。
 静寂。

                      (第七章 暴君の肛虐肉人形)

 なんと優雅で激しく、そして見事な絶頂だろう!
 これを読んだ読者が、ラベルのボレロを聴いただけで絶頂に達してしまうかも?

                         詩織

《作者から》

この作品は、今は国際線スチュワーデスの亜梨紗が、女子高生時代を回想する物語です。回想構造スタイル。(笑)
分類からいえば、ねっちりしたスタンダード調教ものの部類でしょうか。
舞台は汐見市です。これまで数々の犯罪と事件の舞台になった港湾都市ですが、今回は特にみるべき犯罪は発生しません。表面的には非常に静かに物語は進行します。
亜梨紗は何年ぶりかに故郷の町に帰ってきました。実は伯父が死んだのでその霊前に拝するためにやってきたのです。
亜梨紗にとって伯父の健吾は自分の処女を奪った男性です。女子高時代、あまりにも英語の成績が悪かった彼女は、英語の塾を経営し教えていた伯父の個人教授を受けることになりました。
実はセーラー服少女に対して異常な愛着と嗜癖を抱く健吾は、教え子たちに対して特異な教授法を実践していました。それは少女たちに屈辱と羞恥を与えることによって英語を覚えさせる、“全裸SMレッスン”でした。
花も羞じらう十六歳少女は、好色なサディストの伯父によって、あらゆる辱めと拷問を受け、彼のセックス奴隷とされながら英語を身につけてゆくのでした……。
その伯父は子供がなく、孤児院で見つけてきた少年を養子としました。彼の名は俊介。亜梨紗からみれば血のつながりのない二歳年下のいとこになります。
何年ぶりかで再会したいとこ同士は、たがいに相手を魅力的な「異性」として意識しないわけにはゆきません。
ですが、亜梨紗はかつての自分が伯父のもとで全裸SMレッスンを受けていた時、同じ屋根の下にいたはずの俊介のことをほとんど覚えていません。顔をあわす機会が極端に少なかったからです。
なぜ、このいとこに対する記憶が希薄だったのか。その謎は、二人が再会してからしばらくして明らかにされます。美しい従姉に睡眠薬を服ませてから縛りあげ、俊介は養父(つまり亜梨紗の伯父)の秘密を少しづつ明らかにしてゆきます。
彼の告白は亜梨紗の思いもよらぬ内容でした。なぜなら……。

……という具合に、厳格なサディスト教師、伯父の書斎を舞台に、美しく聡明な娘と美青年が会話を交わしながらしだいに妖艶なSM世界にのめりこんでゆく、よく熟成されたフルボディの辛口ワインような味の正統官能SMの世界が繰り広げられます。(笑)お楽しみください。

《書誌情報》

この本はマドンナメイト文庫から文庫版(た1―31)として刊行されました。
他の媒体からは刊行されていません。




ISBN4-576-00664-9
2000年10月10日=第一刷発行
発行=マドンナ社
発売=二見書房
定価本体495円+税

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