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カバーイラスト 佐藤与志朗


兄と妹 蜜縄奴隷

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「ひいいーッ!」
喉奥から自分のものとは思えないほどの絶叫が迸った。
「どうだ、最初の鞭は気持ちいいだろう」
言いながら梅崎は二発目をふりおろした。さっきより強い衝撃。
今度は吹き飛ばされた蛙みたいにひっくり返り、白いわき腹を見せて悶え、のたうった。
「ひっくり返るな。ちゃんと膝でしっかり体重を支えるんだ」
叱りながら三打、四打と鞭をふりかざし、ふりおろす。聡美の絶叫が豪奢な内装のベッドルームに響きわたる。
(これが鞭打ち?なんて残酷なの。私、死んでしまう)
しかし、耐え難い苦痛の中に、不思議と爽快な感覚があった。

《読者からの解説&感想》その1

SMクラブで働いているところを目撃された妹が兄にいろんなことを告白していくお話です。
そのことから兄は自分の母や親戚のいろんなことを知ることになります。妹がSMに目覚めたきっかけとか・・・ 
「親子どんぶり」とか。(「親子どんぶり」の意味は読めばわかります(笑))
 私の中で印象に残ったのは最初に兄が妹を目撃した現場のシーンです。
後ろ手錠をかけられて、その上にコートを羽織らされ、公衆の面前を歩かされるというシーンです。
 自分がされたら興奮するだろうなーって(笑)
 あと官能小説の作家が登場するのだけど、読みながらなんとなく館さんご自身を思い浮かべてしまいました。
「読みたいポルノ小説がなければ自分で書けばいいじゃないか」と小説を書き始めたことや、セーラー服が好きなこととか(笑)

 メグ(MLメンバー)

《読者からの解説&感想》その2

 徹也は意外な場所で妹の聡美を目撃した。
 男と同伴の聡美は、まるで後ろ手に手錠をされているかのような風情だった。
 その夜、兄の部屋にやって来た妹は、衝撃的な過去を、次々と告白して兄を驚かせ る。
 それは聡美がまだ十歳の時のことだった。
 海辺の別荘地にある「お化け屋敷」と呼ばれる廃屋で、一人の男と二人の女のSM プレイを目撃したことが決定的な要因となり、聡美には被虐願望が芽生えた。
 その後彼女は、家庭教師と初体験を済ませたのち、古書店を経営する叔父の愛人と なった。
 聡美が叔父と関係していたことを、徹也はすでに知っていたが、その叔父がペンネ ームを使ってポルノ小説を書いていたことまでは知らなかった。
 セーラー服の美少女を愛する叔父は、聡美をモデルにした小説で稼いだ金で、徹也 たち一家を影でささえていたのだ。
 しかし、SM志向のない叔父には、日に日につのって行く聡美の被虐願望を満たし てやることは出来なかった。精力と創作意欲に限界を感じはじめていた叔父は、ある 人物に彼女を紹介する。
 その男・梅崎は、聡美の告白を聞いてこう言った。
「最初に胸がドキンとときめいた時に見たもの、触れたものが一生の昂奮材料になっ ちまうもんだ」
 叔父の死後、梅崎のもとに身を寄せる決心をした聡美は、彼が経営する秘密SMク ラブ『ラ・コスト』のマゾ娼婦となり、幼い日に見た美しきマゾ奴隷と自分を、ぴっ たりと重ねあわせたのだ。
 それを聞いた兄・徹也は・・・。

 つくづく思う。
 館作品に駄作なし!
 この作品も、ファンには御馴染みの趣向が随所にちりばめられ、ああ、いつもの館 ワールドだなと、安心して読んでいるうちに、とんでもない展開が待ち受けている。
 主人公の少年時代・少女時代の衝撃的な回想が描かれるのは、館作品の定番だが、 本作で描かれる廃屋のシーンの美しさは格別である。
 また「作者とは関係ないですからね」と本人は言っているが、衰えを自覚するポル ノ作家の末路に、一抹の悲哀が漂う。
 全体の半分以上が回想シーンに費やされているが、クライマックスからラストにか けての展開は、まさに絶叫もの!

「ふむ、責めには楽しめる責めとそうでないものがあってね、おれはいくらマゾでも 楽しめない責めというのを開発するのが趣味さ」 (第十二章 肉虐相姦ショー)

 この最終章がスゴイのぉ!
 描写らしい描写はほとんどないんだけど、シチュエーションがシチュエーションな だけに、ものすごく想像力をかきたてられて・・・。
 痛い・・・、痛いよぉ!
 ああ・・・、聡美ちゃんじゃなくっても泣いちゃいます。
 ふえ〜ん。

 詩織(MLメンバー)

《作者より》

この作品は短編がもとになっています。
兄と妹はたがいに認めあうよい関係なのですが、お互い、自分の肉体を「商品」として売っていることに、ある日、気がつくのですね。
強い性欲とマゾヒズム願望をもてあますような美しい妹をもつ兄になったら、どんな気がするでしょうか?

セーラー服マニアの妙なSM作家が出てきますが、作者とは関係ないですからね。まだ衰えがみられない――と思っている。(笑)
ふと気がついたが、最近、SM作家が登場する作品を続けて書いているな。
どうもいい運命が待ち受けていない……。
今回はどうなるでしょうか。

《書誌情報》

本書はマドンナ社よりマドンナメイト文庫シリーズ(た1-30)として文庫判型で刊行された。




ISBN4-579-00552-9
2000年4月10日=第一刷発行
発行=マドンナ社
発売=株式会社二見書房
定価=495円+税

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