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カバーイラスト 松宮まさる
カバーデザイン RAVORIS


令嬢姉妹 愛奴創生

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凌辱愛は、至上の快楽か!?
旧伯爵邸の地下室で繰り広げられる
倒錯の性愛遊戯

猪俣尚紀は、資産家の大叔父・真之介に
秘密の高級娼館「バルバロス館」に連れて行かれる。
そこには、令嬢姉妹でM奴隷の、夏美と冬香がいた。
姉妹の奉仕を受けるうち、
大叔父のサドの血をひく尚紀は
自らのS性に目覚める。
首枷拷問、電流責め、レズプレイ―――
性の深淵を覗き見た令嬢姉妹の赤い慟哭。

《読者からの解説&感想》その1

 主な舞台は秘密の会員制クラブです。
 そこには「ゴールデンダンジョン」と呼ばれる調教ルームがあり、そこでいろんなことが繰り広げられます。
 ある女子大生とOLの姉妹が奴隷にしたてあげられますが、全く自分のM性に気づいていない子が1から調教されて、目覚めていく・・・っていう過程がとても面白く興味深かったです。
 自分のM性をわかっている私でも、読みながら改めて自分の中のM性を強く認識しました。
「まだまだ いろいろご主人様から いろんな調教を受けたい・・・」と。

「不思議なことに自分の姿を美しいと思った」哀れで、無残で孤立無援の頼りない自分。
 なぜかハッと胸を打つような美がそこにはあった。
 凄惨な美というか、凄艶な美というか、無惨な美というか、かつて見たことがない不思議な美、不思議な魅力。ぞくぞくと背すじの毛が逆立つような感覚。

 私もご主人様に縛られて その姿を初めて鏡で見せられたとき、同じようなことを感じました。
 自分を「美しい」と言うのは変ですが、服を脱いですべてをさらけ出している自分が本当の姿なのですけど、純粋に日常の自分に比べてある種の「美」を感じました。
 ご主人様は どう感じたのかは、わかりませんが(爆)彼女の気持ちがよく理解できました。

メグ(BLメンバー)

《読者からの解説&感想》その2

 尚樹は大叔父・猪俣真之介に借金の申し込みを断られたが、魅力的なウェイトレス がいるステーキ・ハウスでご馳走になった上、秘密の高級娼館『バルバロス館』で生 まれてはじめての歓待を受けた。
『バルバロス館』、そこは別名『快楽の館』とも呼ばれ、終戦直後、進駐軍が高官専 用慰安施設として使っていたものだった。
 尚樹の眼の前では、夏美・冬香の美姉妹が、被虐の果てに快楽の頂点へと昇りつめ ていく……。
 残酷な美に魅せられた尚樹に、「御前」と呼ばれる大叔父は言った。
「三ヵ月やろう。その間に誰かいい女が、おまえの言うなりの状態になったら、わし に連絡するがいい」
 そうすれば一億の融資を約束してくれるというのだ。
 しかし尚樹は途方に暮れてしまう。
 まったくの素人娘を、自ら進んで奴隷にさせることなど出来るだろうか?
 しかし、『バルバロス館』でこっそり自分の携帯番号を教えてくれた冬香と再会 し、彼女とのプレイでおのれの中に眠るSの資質に目覚めた尚樹は、夏美・冬香姉妹が奴隷になった経緯を参考にし、ふたりの協力を得て、ある女性に目標を定めた。
 名づけて「ミスMプロジェクト」!

 老練の先達からSM指南を受ける若者の姿が、ビルドゥングス・ロマンのように描 かれる。
 何よりもまず、快楽の粋を味わいつくした「御前」という人物が魅力的だ。
 戦後史の暗黒面をバックボーンに描かれる彼の言葉のひとつひとつが、酸いも甘い も噛みわけた大人の至言となっている。
 一方、登場する女性たちも魅力的である。
 姉妹でレズビアンで牝奴隷というだけで夢のような存在なのに、夏美・冬香姉妹が 自らのM性に目覚めて行く過程が丹念に描かれているために、あたかもそういう女性 が現実に存在するかのような錯覚に陥ってしまう。
 ビデオや鏡を駆使して、ナルシズムと羞恥心をくすぐられながら、深い快楽の淵へ とのめり込んで行く姿は、丹念な描写と相俟って、男性読者をもヒロインと自己同一 視させてしまうほどの魔力を持っているに違いない。
 基本的に館淳一の作品は、マゾヒズムの文学であろうと思われる。
 どんなハードな責めの場面が描かれていても、描写の力点は女性の悦びに置かれて いるからだ。
 また、この作品でも夢見山市、汐見市など館作品では御馴染みの地名が登場する が、ステーキハウス『田ノ倉』や、『エメラルダス・アンバサダー』など店やホテルの名前が、作品を越えて共有されているのを見つけるのも、読者の密かな楽しみである。そうそう、チラッと出てくる『Tクリニック』の女医は、鷹見令子に違いない、とか、ね。
 独自の官能世界を構築し、他者の追随を許さない孤高の作家の世界が「館ワール ド」と呼ばれるのも、こうした細かい仕掛けが世界観の統一に一役買っていることも見逃してはならないだろう。

「人生は一場の夢だ。せいぜい楽しめ」
                        (第三章 電流拷問)

 もし縛られたことも、鞭で打たれたこともない人がこの小説を読んだら、自分はな んて不幸な人間だったんだろうって思うでしょうね、きっと……。

 詩織(MLメンバー)

《作者から》

 SM愛好者の世界では、よく「調教」という言葉が使われます。
 サディストが、自分の欲望を満足させるために、ノーマルな人を強制的にマゾヒストに仕立てあげてしまうのが調教です。
 実際は、ある程度マゾヒズムに関心のある、自分の中のマゾヒズム性にめばえている相手を誘い、ほぼ合意の上で行なうことが多いですね。これは「調教プレイ」であって、真の調教ではありません。
 お金のために、誰かをほんとうに「調教」して真のマゾヒスト奴隷にしなければならなくなった青年が、いろいろ模索し、研究し、実行する――というのがおおまかな筋書きです。
 野の獣を捉えて家畜としてしまうように、現実に、まだSMの世界に無縁の相手をマゾの奴隷として「調教」するのが可能なのか、そのノウハウというのがあるものか、いろいろ考えてきたことを集大成してみたのが、この作品です。

 愛奴とするべきターゲット(ある女子学生に狙いがつけられます)の選択から始まり、じわじわと彼女を甘美なる悦虐の世界へと誘ってゆく罠の仕掛けかたが、作者の一番書きたかった部分です。

 この作品については、故人となられた先輩作家・矢切隆之さんが『日刊ゲンダイ』紙上で、こう褒めてくださいました。

 まず、壮大な仮説に驚嘆する。
 かつてGHQ(日本駐留連合軍最高司令部)が旧華族の令嬢を呼び寄せ、SMプレイに興じていた――という驚くべき設定の上に、この性の饗宴を現代に出現させることは可能か、という夢を抱いた人物が登場する。
 美女をそろえ、首枷拷問、電流責め、レズプレイなどのを行なう。
 全編に美女の悲鳴が聞こえる小説で、ファンタジックな性のユートピアが描かれる。

 矢切さんはぼくより数歳年上でしたから、進駐軍が日本を支配していた時代をよく御存知で、その呪われた過去から現代に繋がる性的ユートピアという発想をことさら愛でてくれたのですね。
 著者が作りだした登場人物でなかなか気に入っているのが、主人公の大叔父で“ゴールデン・ダンジョン”を今の世に再生させた超絶倫のエロ爺いさん、猪俣真之介なんですが、彼はあの M資金 を操って巨万の富を築いているのです。
「M資金ってなに? マゾヒストを働かせて得る資金?」
 本書に詳しく説明されているので、読者は勃起しながら戦後の占領軍支配時代、闇の歴史を勉強できます。(笑)

《書誌情報》

本書は日本出版社よりアップル・ノベルス・シリーズの一冊として新書判型で刊行された。
2001年現在、他の媒体での発表はされていない。





SBN4-89048-192-3
1997年10月8日=第一刷発行
発売=日本出版社
定価=本体800円+税

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