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カバーイラスト 仁井田孝


近親の獣道

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素性の知れないサディストによって
瑞々しい無垢な裸身を汚されて
絶望の淵に苦悶する優美は
やがて美少女マゾ奴隷へと調教されていく

《読者からの解説&感想》

 両親を亡くした姉弟がある災害に遭い、弟の方が半身不随状態に。

 勃起機能も失われた弟を献身的に介護する姉……。
 その姉弟に興味を持ったある男性教師は彼女たちの両親のある秘密を握り、それをネタに姉を脅し、自分の奴隷にさせてしまいます。
 この話では、姉弟の両親が残した絵画が重要な鍵になってると思います。
 その絵をめぐって教師や、その他のグループがいろんなことを企てて……。
 私が読んだ館さんの作品の中で 初めて 殺人シーンが出てくる 物語だったので、何だかTVドラマのサスペンス劇場を見ているようで?(笑)ハラハラ ドキドキしました。

 メグ(MLメンバー)

《作者から》

 作者は美術には少なからぬ関心があり、中学校時代の友人がその土地では有名な画家の息子で、父親がやっている美術教室を何度か訪ねた経験から、画家、モデル、その作品がからんでくる作品をけっこう多く書いています。
 パッと思い出すところでは『父の秘画』という短編、長編では『犯された蜜獣』でしょうか。
 実はこの作品も、そういうテーマの初期短編(目下・調査中)が核になっています。
 ところで作中、宮永という画家が描いた作品がわりと詳しく描写されます。

 小さな島を背に、正面から見るものへ向かって一艘の小舟が進んでくる。
 乗っているのは一人の女。小舟の真ん中にすっくと立っている。彼女が纏ってい るのは頭からすっぽりかぶる頭巾のついた白いマントだ。
(略)
 空は暗雲に覆われ、ただ一条の光が、女がいま漕ぎだしてきたばかりの小島にふり射していた。
 その島というのが、岩ばかりの、ひょろひょととした木々が、これまた焦げたように真っ黒で、ひどく陰惨かつ陰鬱な島なのだ。

 美術に興味があるかたなら、この絵が、ある有名な絵をモデルにしているとすぐお分かりでしょう。
 そうです。ドイツで活躍した19世紀象徴主義の幻想画家、アルノルト・ベックリンの『死の島』ですね。
 ただし元絵は、小舟の女性(だと思う)は背を向けています。漕ぎだしてきたのではなくて、これから舟を着けようという状態。
 ほとんど同じ構図で何枚か描かれていますが、その一枚はかつてヒトラーが執務したベルリンの大統領官邸の執務室に飾られていました。ヒトラーが気に入っていたのでしょうか。

 この絵をまだ見られたことがないかたは、ぜひ、見ていただきたいものです。ぼくはニューヨークのメトロポリタン美術館、ベルリン国立美術館で見ています。何時間でも絵の前に立っていたかったほど魅了されたものです。
『死の島』については、下のホームページが分かりやすく解説してくれています。
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/9957/art2.html

 この作品は、べックリンのこの絵から生まれたようなものです。

《書誌情報》

本書は日本出版社よりアップル・ノベルズシリーズとして親書判型で刊行された。
デジタルテキストは発売されていない。





SBN4-89048-182-6
1996年11月1日=初版発行
発行=日本出版社
定価=830円(税込)

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