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カバーイラスト 石川五郎


妹の肉玩具

79

美しく残忍な熟女が少年に歪んだ性癖を刻みつけて‥‥

「どういうことなの、これは?まだ小学生のくせに‥‥」
口で罵倒嘲弄しながら、足で蹴ったり踏んだりする雪子の表情は桜色に上気して、 目はキラキラと輝き、全身から強烈なオーラのようなものが発散されている。
(先生は僕をいじめることで楽しんでいる!)
雪子が喜ぶなら、その瞬間「もっといじめられてもいい」という感情が湧いた。
その強烈な歓喜、昂揚感、陶酔感は目がくらむような肉体的快感を伴っていた。
それは、下着を突き破らんばかりに盛り上がった股間の隆起を、
雪子が体重をかけて踏みにじった時に頂点に達した。

《読者からの解説&感想》その1

 昭彦が女装に目覚めたのは、母親の許を離れ、世話になった雪子先生の影響だった。
 裸にされ、柱に縛りつけられた少年は、女もののパンティを穿かされ、放置される という屈辱的なお仕置によって、性に目覚めてしまったのだ。
 雪子先生の性の玩具として弄ばれる昭彦・・・。
 そこにひとりの美少女が闖入する。
 窃視癖のある少女・紗奈絵は、雪子先生との痴態を盗み見てしまったのだ。
 こうして昭彦は、年下の少女に調教され、肛門奴隷となった。
 そしてそれは現在の昭彦の生き方を決定する重要な体験だった。
 成長した彼は、東京でイラストレーターとして活躍しながら、クラブ『プアゾン・ ブルー』でシーメイル娼婦アキとして働いていた。
 その日、昭彦は『プアゾン・ブルー』の女性経営者マヤの呼び出しを受け、雑誌 『ワンダーシディ』の取材で、濃厚なフィストファックを披露する。
 それから数週間後、異父妹の弥生が、大学の最終面接と入寮手続のために上京して 来た。
 弥生は母親から、昭彦の女装のことは聞かされているらしい。だが、この美し い妹は、すでに『ワンダーレディ』に掲載された写真と記事で、シーメイル娼婦とし てのアキの存在を知っていた。何故なら、シーメイル・アキの顔は、弥生とそっくり だったからだ。
「恋してしまったの、その瞬間。私、アキって美女に恋してしまったの」
 シーメイルの兄に恋した、レズビアンの妹・・・。
 そして戦慄のラストが訪れる!

   

 館淳一の作品には、どの作品にも、どこか少年小説の趣きがある。
 それはたとえば本作のように、主人公の少年時代の強烈な体験が丹念に描かれるか らだけではない。
 少年はある日、世界を丸ごと認識してしまう。そしてその認識が、彼の一生を支配 してしまう。それは少女の場合も同様だ。
 そしてここが大切なところなのだが、館作品のすべてが、世界を新鮮な眼で見る少 年の視線によって描かれているということなのだ。
 たとえ似たような趣向、描写が登場しても、読者は少年の日、はじめて視界いっぱ いに広がった世界と対峙した時のように、常に新鮮な感動でそれを受け止めることが 出来る。
 館作品を、何冊読んでも、何度読んでも飽きないのは、そういう理由に違いない。
 そういった意味では、宮澤賢治や稲垣足穂と比肩しうる、数少ない作家のひとりと 言うことが出来るだろう。
 かつて江戸川乱歩は、「芋虫」という作品が当局の弾圧を受けたことに対し、左翼 側から支援され、後にこのように語っている。
「私はあの小説を左翼イデオロギーで書いたわけではない。私はむろん戦争は嫌いだ が、そんなことよりも、もっと強いレジスタンスが私の心中にはウヨウヨしている。 例えば『なぜ神は人間を作ったか』というレジスタンスの方が、戦争や平和や左翼よ りも、百倍も根本的で、百倍も強烈だ」(『探偵小説四十年』)
 −−と。
 人間存在そのものへのレジスタンス!
 この壮大な企ては、SMや女装や近親姦などのアブノーマルな題材を駆使して、そ もそもノーマルとは何なのかという逆の設問をギリギリまで問いかけて来る。その結 果、人間という曖昧な存在の概念は打ち砕かれ、読者は魂を解放されたような快感を 味わうのだ。
 イクだとかヌクだとかったいった次元をはるかに超越した官能の世界がここにあ る。
 そしてもうひとつ、本作にほどこされた巧妙な仕掛けは、ソフォクレスも裸足で逃 げ出すほどの壮絶な展開を見せ、さらに凄いことにそれは「悲劇」では終わらないの だ。
 まさに空前の大傑作である。

女らしいものが最も男らしいものを包み、飾りたてる。その視覚的なコントラストがシーメイルの妖しい非現実的な美をさらに妖しく煽りたてる。
                       (第五章 シーメイル娼婦)

 それとね、この作品にはフレンチ・メイドのコスチュームを着た、香住ちゃんっていう素敵なシーメイルさんが登場するの。
 実は以前から館さんと親しくしていたファンに、本当に香住ちゃんと名乗るシーメールさんがいらっしゃって、館さんは彼女のイメージをそのままに作品の中に登場させてくださった――という話は、ファンの中ではよく知られています。
 そこで、この作品に香住ちゃんが登場するいきさつや館さんとの関係を、ご本人に語っていただきたいと思います。

香住(MLメンバー)「館淳一さんは今でいうインターネットの掲示板以前からパソコン通信を使って「アブノーマル談話室」という電子会議室を開いて、読者との距離を近づける努力を怠っていませんでした。それは週刊プレイボーイに連載された『ぼくのどきどきサイバーネット』(後に文庫化、『猥褻騎乗・叔母の童貞しぼり』マドンナメイト)で記述されている『オフ会』に登場したキャラクターが、実際に行なわれた『オフ会』の出席者とほぼダブっていることからもうかがわれます。
 私は、館さんの電子会議室に参加するのがわずかに遅かったため(?)その『サイバーネット』に出演できなったことをすごく、悔やみました。
 そのことを知った館さんは、この作品で、私を出演させてくださいました。その 後、その役の格好をしたときの写真をお送りしたりとか、私にとって忘れられない思い出になっています」

   ありがとう香住ちゃん。
 この本はね、傑作ぞろいの館作品の中でも、特に愛着の深い作品です。
 ああ、あたしも弥生ちゃんみたいな妹が欲しいな!

  詩織(MLメンバー)

《読者からの解説&感想》その2

館淳一のMLメンバーの中にシーメールや女装っ子の人が多いためか、チコは第4章「女性下着の誘惑」、5章の「シーメール娼婦」を特に興味を持って読んだ。

チコは黒のレースがたっぷり使ったスリップ、黒のガーターベルトとショーツを着けて、鏡を覗くと鏡に映る自分の姿にセクシーさを感じてうっとりすることってあるの。でも、シーメールアキの、

急いで黒いハーフカップのワイヤー入りのブラを着ける。(中略)
黒いシーム入りのストッキングを履き、ガーターベルトの四本のサスペンダーに留めてピンを吊り上げる。(中略)
爪にていねいにワインレッドのマニュキュアを塗り、香水を肌につける。(中略)
この美女がコートの中には黒いランジェリーだけしか身に着けていない。シーメール娼婦アキのお出かけである。

チコはこの部分を読んでシーメールの気遣いに驚かされた。
シーメールのマゾ奴隷は、乗馬鞭とフィスト責めの調教を受ける時の喜び方も女性と同じという。
ドキドキ、ワクワクしながら読んだ小説である。

 ドクトル・チコ(MLメンバー)

《作者より》

ご存知、MM文庫の、ぼくとしては『女神の双頭具』に次ぐ二冊目の作品です。
えッ、MM文庫をご存知ない? それはまずい。(笑)
「旧来のポルノグラフィーとはひと味違った――特にM性の濃い作品ばかりを刊行しています」と腰巻ウラに書かれていますが、要するに男性M系の作品を集めたシリーズでした。
当時は(今も)そういうシリーズは無かったため、シーメール系統の作品を発表できなかったぼくにとって、非常にありがたい存在でした。
ノーマルなポルノ、SMポルノの分野では「男性M、女装、シーメールはご法度」という厳しい掟があるので、編集者の目をかすめるようにして書くしか表現の手段がなくて、ぼくは欲求不満にさいなまれていました。
そういうご法度が解禁されたのですから、一作目の『女神の双頭具』はかなりリキを入れましたが、おかげで好評だったので、この作品もそれ以上のリキを入れ、ノッて書いたものです。(笑)
表紙カバーのイラストもすてきで、ぼくはそうとうに気にいっていた本なのですが、やはりMモノ女装モノは商業的に無理があった企画だということで、MM文庫は二年ほどで消滅しました。無念……。
この作品も以来、闇に封印されていましたが、後につか絵夢子さんの絵でレディースコミック化されたことがあります。

《書誌情報》

本書はマドンナ社のマドンナメイト文庫が始めたMM(マドンナ・ミストレス)文庫シリーズの一冊として文庫判型で刊行された(MM文庫は後に廃刊)。 絶版後、他の媒体から発表されていない。




ISBN4-576-96036-9
1996年4月25日
発行=マドンナ社
発売=二見書房
定価=550円(本体534円)

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