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カバーイラスト 松宮まさる


近親の架刑

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神を恨み、天を呪う。
密室に漂う寂滅の匂い。
鬼才・館淳一、衝撃の書き下ろし500枚!

21歳の美しいOL中条真理亜は、少女期に火災で両親を亡くし、双子の兄・優哉も、それ以来行方不明となっている。優哉の行方を追う闇の組織。そして優哉の行方を知るという謎の女・レイカ――。
肛門輪姦、蝋涙地獄、架刑台の調教。真理亜は次々と襲いくる男たちの過酷な凌辱に身も心も翻弄されてゆく。
倒錯文学の鬼才・館淳一が書き下ろす、インセスト・ワールド。

《読者による解説と感想》

 ヒロインの名は真里亜。
 象徴的に登場する架刑台。
 物語の後半では処女娼婦として活躍する彼女の姿に、聖母マリアの姿をダブらせる ことは決して強引な連想ではないはずだ。
 確かにキリスト教はエロティックな象徴に満ち溢れている。
 十字架に架けられたキリストの姿に、マゾヒズムの極致を見る者も、少なくはない だろう。
 しかし作者は、宗教における苦行や洗脳のプロセスと、SMにおける調教の違いを しっかりと描ききっている。
 この作品がオウム真理教事件のあった1995年に発表されたことは、そのことと 無関係ではあるまい。
 一方、処女娼婦というアンビバレントな存在となった真里亜が、老人たちを回春さ せる奇跡の美女へと転生する姿は、感動的である
 魂を浄化させる官能小説なんて、館淳一以外に誰が書けるだろう?
 さらにすごいのは、浄化の先にさらなる快楽の世界が開けることだ。
 かつて筒井康隆は『エディプスの恋人』で「イク」という感覚を全宇宙レベルに拡 大して見せてくれたが、館淳一はブラックホールをくぐり抜けて反世界へと突き抜け る前人未到の宇宙へとわれわれを誘ってくれる。
 二卵生双生児の兄妹という関係にも、どこか神話的なエロスを感じさせる館淳一版 『聖書』!

「自分の魅力に気付いていない娘がいちばん魅力的なのよ」
                      (第八章 謎の女、レイカ)

 真里亜ちゃんが通っていた中学は『白萩女学院外浦分校』、ということは『セーラ ー服恥じらい日記』の舞台になる『白萩女学園』の分校なのね、きっと……。
 ホテル『エメラルダス・アンバサダー』は館ワールドでは御馴染み。
 それと、レイカさんって、『女神の双頭具』に登場するあのレイカさんと同一人物 ?
 だったらいいな!
 そういえば『女神の双頭具』には女医・令子さんも出てくるわ。こうしていくつも の作品でお会いしてると、何だか実在の人物みたいで不思議よね。

 詩織(MLメンバー)

《作者から》

 千草忠夫さんの牙城ともいえるアップル・ノベルズを擁する日本出版社からの、初めての作品です。
 文庫版シリーズはどこも規格化されて、原稿用紙にしてほぼ300枚というのが標準ですが、この新書は500枚を書いても「どうぞどうぞ」と受け入れてくれます。それだけに、書いても書いても書き終わらない、という苦労はありましたが、書きがいはありました。
 ただ、ぼくが私淑していた千草さんがおられたために、かなり意識して少し硬くなったかな、という気もします。発想がなかなか飛躍できないというか。(笑)
 一番、気にしていたのは、謎の美女・レイカと、最後まで登場してこない真理亜の兄、優哉がどう結びつくか、という部分。何せ真理亜と優哉は二卵性双生児なのですからね……。
 その部分に対してあまり批判が無いのは、まあ「そんなこともありだろう」と認めてくださったのか、「館淳一だから仕方ねえよな」と諦めてくださったのか。(笑)  

 処女でありながら娼婦である――という存在は、『美少女緊縛獄舎』の矢萩いずみもそうですが、そもそもの出発点は『姉弟日記』の、25歳の処女人妻・黒木裕子にまで遡ります。
 そういった矛盾した存在、あり得べからざる存在(男でありながら女、のように)が好きなんですねえ、どうも。(笑)

《書誌情報》

本書は日本出版社よりアップル・ノベルズシリーズの一冊として新書判型で刊行された。
また『黒い下着の銀行員』ともども、つか絵夢子さんの手でレディースコミック化された。
(詳しくはNo.70参照
デジタルテキストは発売されていない。





ISBN4-7669-2337-5
SBN4-89048-176-1
1995年12月15日=初版発行
発行=日本出版社
定価=830円(税込み)

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