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カバーイラスト 新井田孝
カバーデザイン 吉原夢良 


OL奴隷契約

50

《収録作品》

『OL奴隷契約』
『母娘(おやこ)くらべ』
『真夏の夜の裸女』

まだあどけなさを残す22歳のOL、なつ子。
彼女の日記には、日ごとに激しい調教の記録が!
オナニー、露出ショウ、フィストファック……
痴漢プレイ、強姦プレイ、誘惑プレイ……
清純な女体に魅せられた肉の試練、奴隷契約が、
なつ子の心を蝕み、魔性を開花させてゆく。

《読者からの解説と感想》

OLの浅井なつ子と、管理職サラリーマンの三波克治とが、月々15万円で奴隷契約を結ぶ。
なつ子は以前、中島という男の愛人になってマンション暮しの面倒をみてもらっていた。
 中島との関係が破綻したので、人を介して新しいパトロンを求めたところ、克治が名乗りをあげたのだ。
 なつ子は贅沢するためのお金、克治は倒錯的な性欲の処理だけが目的の、ドライな関係から始まる――。

 克治がなつ子のマンションを訪れるようになって、若いOLはセーラー服を着せられて襲われたり、さんざんスパンキングをされたりと、楽しくきびしいセックス奴隷へと調教されてゆく。
 微笑ましく感じたのは、前の愛人との関係を記した日記を、克治がこっそり読んでゆくところ。

《N、八時すぎに来る。泊まり。浴室でF。寝室でI3.G×3.三時まで》

Nが愛人の頭文字、Fがフェラチオ、Iはインサート(挿入)、GはGスポットで感じたオルガスムス――というように暗号で書かれている。

 スパンカーのチコにとっては、三波がなつ子に与えるきびしいスパンキングのシーンがたまらない。お仕置きの時のスパンキングの手本にしたいくらいだ。
 日記のこの部分 ↓ は、ご主人様に愛されるM女の憧れのプレイに思えて、特に好きだ。

《ご主人さまは、七時すぎに来る。
縛られてプレイ。F、A。この前持ってきた一番太いバイブを使われて、気が遠く なった。
G×3、ご主人様はAでG。
その後、ご主人様から奴隷契約書を示された。その内容は……》

驚くべき内容の契約書からなつ子の奴隷契約が始まる。
なつ子の調教の内容は日記に綴られ、読者は彼女の日記を読むことで、なつ子がどんなふうに愛奴にされてゆくのかを理解する。
最後はこんなふうだ。

《これから、どうなるんだろう。この日記を書いていて、少し不安なのも事実だ。
でも、契約したんだから、ご主人さまにすべてを任せよう――。》

いつもの館淳一の小説とは少し違う感じがして、ともかく面白い小説だった。

 ドクトル・チコ

《作者から》

『ОL奴隷契約』は、『小説CLUB』誌に発表された40枚の短編。
それを120枚ほどの中編として巻頭に置き、それぞれ加筆した短編を二つ配した、中・短編集である。

『ОL奴隷契約』を書いたときのテーマは「嫉妬」だった。
金銭で欲望を満足させる、ドライな愛人関係だったはずなのに、いつのまにかパトロンである主人公は若い娘にふり回されるようになる。
彼女は非常に従順でどんなことにも素直に従い、理想的な愛奴になりそうだ。他の男がいる様子もない。
しかし、主人公は彼女の前の愛人(その後、自殺していたことが分かる)の存在が気になってくるのだ。新しいパトロンを迎えるにあたって、娘は前の愛人の痕跡を徹底的に消してしまうのだが、主人公は奇妙な嫉妬に駆られて「彼」の痕跡を必死になって探そうとする。
この奇妙な感情の揺れと軌跡は、その頃、つきあっていた女子大生との関係で味わった感情がもとになっている。愛してなんかいないのに、彼女の性行動が気になって気になって仕方がない。そして他の男とデキたと知ると、すごく興奮してしまうのだ。
愛があるから嫉妬があるというけれど、愛がなくても嫉妬(に近い感情)は湧くものだ。
そして嫉妬することで男は興奮する。そのメカニズムはどうなっているのだろうか。
館淳一ワールドのなかで繰り返し繰り返しなされる現場検証のプロトタイプ的なパターンがここにある。無害な第三者として「少年」がとりこまれるのも。

  もう一つの試み。それは、ぼくの作品では何度も見られることなのだが、日記を介した「覗き」行為だ。
日記というのは、非常に簡潔に書かれることが多い。永井荷風の『断腸亭日乗』がいい例だが「何が起きたのか、あったのか」を数行の行間に読み取らねばならない時など、窃視者のようなスリルを味わわないだろうか。
「非常に簡潔な文で読む者を興奮させることができるか」
日記を盗み読みさせるシーンがよく登場するのは、作者がこういう実験を楽しんでいるのだと思ってほしい。(笑)

作品のなかで、地の文はパトロンである克治の視点に終始し、なつ子が何を考え何を感じているかは一切書かかれていない。そちらは日記を読むことで分かる。
ただし、この形式を嫌う読者がけっこう多く、作者としては苦しいところだ。
「官能小説の読者は、一人称の記述を嫌う」という鉄則があり、日記による表現はこの鉄則にモロに違反してしまう。しかしね、日記は三人称では書きにくい。(笑)
あなたもやはり、こういう形式は嫌いだろうか。

《初出情報》

『ОL奴隷契約』…………『小説CLUB』92年1月号
             (『飼育日記』加筆改題)
『母娘(おやこ)くらべ』……『小説CLUB』90年7月号
               (『机の下の子猫』改題)
* No.47『母娘蜜くらべ』のタイトル作が『母娘くらべ』であるが、こちらの作品とはまったく違うものである。混同されないように。

『真夏の夜の裸女』………『小説NON』91年8月号

《書誌情報》

本書はフランス書院のフランス書院文庫シリーズの一冊(通算ナンバー0416)として文庫判型で刊行された。
デジタルテキストは発売されていない。





ISBN4-8296-0416-6
1992年3月10日=第一刷発行
発行所=フランス書院
定価=500円

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