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カバーイラスト 渡辺ケン
カバーデザイン 鈴木邦治


牝犬邪淫調書

35

《収録作品》

『未亡人看護婦  湯本奈津美』
『プログラマー  加倉井翔子』
『経理課OL  里中尚美』
『コンパニオン  ミキ』
『専門学校生  風祭由希』
『英語科教師  夏川絵美子』

……やがてペンチを持ち出してユキの勃起した乳首をひねりあげ、
洗濯挟みで秘唇をはさみつけ、極限まで剥き拡げた。
「おお、おおーっ、許して・・・・・・っ!」
泣きじゃくり哀切な悲鳴を上げ、
ねっとりとした脂汗にまみれた裸身をくねらせ悶えるユキの秘溝は、
それでもおびただしい分泌液をあふれさせた。
肉核は充血しきってコリコリと尖り、せり出してくる……。

(「専門学校生 風祭由希」より)

《読者による解説と感想》

本書に収録されている6編に共通するテーマは『罠』かもしれません。
六者六様の罠が仕掛けられていて、それぞれ獲物が欲望に裏づけされた罠にはまっていく経緯が巧みに描かれています。あらすじはこんな感じです。

「未亡人看護婦 湯本奈津美」
自分を欲望のはけ口にしてるだけなのはわかっているけど・・・。捨てられかけたマゾ奴隷看護婦がとった行動は?

「プログラマー 加倉井翔子」
何故、勤務中に淫らな欲望を感じるようになってしまったの?名前も知らないあの娘のことが気になるのは何故? そして翔子は堕ちていく。

「経理課OL 里中尚美」
私は罰を受けることを望んでたっていうけど、じゃあ私を罠にはめたのは私?
伝票改竄を見つけられた尚美の懲罰願望に終わりはない。

「コンパニオン ミキ」
ふらっと寄った個室ビデオ屋、こんなサービスしてもらえるんなら入会金も安いもの。今日もミキのアヌスを楽しもう・・・。あれ?

「専門学校生 風祭由希」
知合いから紹介された由希は、マゾ奴隷。「こんなお嬢様風の娘が」と驚く和人だったが、次第に深みにはまっていく。

「英語科教師 夏川絵美子」
憧れの女教師がレズだという噂は本当なのか、少年たちの賭けはクラスのマドンナを巻き込んで危ない方向へ・・・。

各作品のタイトルは女性の職業と名前ですが、まさに「調書」ですね。
病院のこと、コンピュータのこと、経理のことなど専門用語も適度に織り交ぜられていますので、とても現実味、臨場感があります。
そして、それぞれ物語はその職種である必然性があるのです。つまり、そんな罠なのです。
また、罠にはまるのがヒロインだけとは限りません。そして、最後の罠にかかる獲 物は「読者」なのでしょう。
館さんの独特な世界「館ワールド」から逃れられなくなる罠、それが本書ではないかと思います。

余談ですが、この『牝犬邪淫調書』というタイトルはその後の館さんの作品の中でも時々登場します。館さんのお気に入りのタイトルなのかな。是非、探してみてください。

堂玄(MLメンバー)

《作者より》

 1989年夏からポルノ文庫戦線に参戦したコスモ出版トマト文庫は、当初、テーマ別のアンソロジーを出していましたが、やがて作家別の短編集を出すようになりました。
 この本はぼくがトマト文庫で出した初めての短編集でした。
 編集者は従来の短編集とは変わった色を出したかったらしく、同じ系列のものを揃えて、原題を消し、女性の名と職業だけをタイトルとしました。
 作家としては苦労してつけたタイトルが消されることは必ずしも嬉しいことではありません。一冊の本になった時はちょっとがっかりしました。
 しかし時間がたってみると、こういうふうな作りにしたのは案外正解だったのかもしれません。

 特にSMスナイパー誌に掲載された3作(看護婦ミキ、プログラマー翔子、専門学校生ユキ)は、実は「実際に起きた事件をもとに物語を作ってほしい」という注文に応じて書かれたものなのです。
 つまり頭の中で起した事件や犯罪ではなくて、実際にもう事件は起きている。その背後にはこういうことがあったのではなかろうか、いや、そうに違いない――とぼくが推理していったわけです(でっちあげた、とも言う(^_^;))。
 事件の記録を下敷きにしているので、自然にセミドキュメンタリータッチな、犯罪調査報告書的な内容になり、リアリティが生じるのは当然といえば当然かもしれません。

『コンパニオン・ミキ』は、この当時、流行していた個室ビデオ屋さんにぼくも出入りしていて、「ここで性的なサービスしてもらえたらいいなあ」と考えたのがきっかけです。当時、まだここに描かれたような風俗店は存在せず、この書が出て少ししてから個室ビデオと射精サービスを組み合わせた風俗店が登場しました。
 長編『姉と弟・監禁調教』(フランス書院、No.42)で登場する“会員制ビデオ鑑賞室・ミラーズハウス”というのは、場所こそ新宿から御徒町あたりに変わっていますが、このお店の発展形態です。

『経理課OL』は、誰でも日常、ごく当たり前のように(?)やっている領収書などの伝票を女事務員が改竄する行為が発端です。
 マゾヒストの場合、罰せられたい――自己懲罰願望というのが強く、一歩間違うと、この尚美のような自己破壊願望にまでつき進んでゆきます。

『英語科教師』は、ぼくの最大の弱点(笑)である電話を使って、盗聴と脅迫が行なわれます。
 当時はまだ携帯が普及してなくて、ようやくワイヤレス受話器というのが一般的になってきましたが、ぼくは使っていなくて、編集者から「こういう使いかたは出来ないと思いますよ」と言われてしまいました。(笑)
 「館さんは電話が苦手」というのは、ぼくの作品を読み込んでいてくれるファンにはバレバレだったらしく、ときどきからかわれてしまうのですね。あれほど猖獗を極めたポケベルは、ぼくの作品には遂に一度も登場しません。(笑)
 いろいろ苦心して勉強したのですが、携帯電話も、どうも使いこなせません。一生、ダメかもしれませんね。(笑)

《初出情報》

『未亡人看護婦 湯本奈津美』…………「SMスナイパー」掲載号調査中
                   (原題『白衣は邪淫にまみれて』)
『プログラマー 加倉井翔子』…………「SMスナイパー」掲載号調査中
                   (原題『電子回路に淫獣潜む』)
『経理課OL 里中尚美』………………「月刊小説」1989年8月号
                   (原題『堕ちていく歓び』)
『コンパニオン ミキ』…………………「小説CLUB」1989年8月号
                   (原題『悦楽の密室ビデオ』)
「専門学校生 風祭由希」………………「SMスナイパー」1987年12月号
                   (原題『情欲という名のベンツ』)
『英語科教師 夏川絵美子』……………「シークレットZONE」1989年10月号
                   (原題『覗かれた女教師』)

《書誌情報》

本書はコスモ出版よりトマト文庫シリーズ(N-11 )として文庫判型で刊行された。
本書に収録されている6編のうち、下記の4編は『女教師の猥褻指導』(マドンナ社、No.68)に次のタイトルで再録されている。(参照No.68)

『未亡人看護婦 湯本奈津美』→『白衣は邪淫にまみれて』
『プログラマー 加倉井翔子』→『電子回路に淫獣潜む』
『経理課OL 里中尚美』→『堕ちてゆく歓び』
『英語科教師 夏川絵美子』→『女教師の猥褻指導』(中編化)




ISBN4-7669-2337-5
1990年1月5日=第一刷発行
発行=コスモ出版
定価=430円(税込)

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