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カバーイラスト 神崎佳


淫獣教育

28

《収録作品》

『淫獣教育・ジュニア編』
『凌辱戦線異状なし』
『真夜中のアンドロギュノス』
『神よ、わが閨房を覗くな』
『聖娼婦の夜』

《読者による解説》

館さんの短編集は「鍋」なのかもしれません。いろんな具があり、それぞれの出す出汁と旨味が調和して独自の味をかもしだす、そんな感じがします。

本書に収録されている5編にも実に多様な人たちが登場します。
・女子中学生を誘惑する謎の女性(『淫獣教育・ジュニア編』)
・インポに悩む中年男性(『凌辱戦線異状なし』)
・違和感の全くない女装者(『真夜中のアンドロギュノス』)
・48歳の未亡人歯科医(『神よ、わが閨房を覗くな』)
・ちょっと太めの子持ち娼婦(『聖娼婦の夜』)
など、もしかすると他の官能小説ではあまり見かけることができないタイプの人たちの特異な世界が描かれています。

また、後の「熟妻と美少女 大凌辱!」(フランス書院文庫)の素になった『凌辱戦線異状なし』はレイプを軸としたバイオレンス系ですが、『聖娼婦の夜』などにはSMシーンはありません。このようにシチュエーションもとても豊富です。

豊富な具とスパイスでほどよく調理された館さんの「鍋」、あなたも味わってみませんか?今まで知らなかった館さんに、そして新たな官能に出会えるかもしれませんよ。

「淫獣教育・ジュニア編」
痴漢されていた女子中学生を助けたもとダンサーの奈緒子は少女の手首を自分の下腹部に導いた。やがて、二人はスタジオに向かうことになるのだが、奈緒子の真意は?

「凌辱戦線異状なし」
インポになった竜一が友人に教わった治療法を試すために向かった先は田園地帯の一軒家。山崎医師の考える斬新な治療法とは?

「真夜中のアンドロギュノス」
飛び込んだスナックバーで出会ったララちゃんが実は男性だったなんて信じられない。でも、次長は何故、彼女が男だってことに気づいたのだろう?

「神よ、わが閨房を覗くな」
妻が家出した。妻の母親との妖しい会話が危険な香りがするのは台風のせいか、ワインのせいか。

「聖娼婦の夜」
地方都市で出会ったちょっと太めの子持ちの娼婦。まるで息子の成長アルバムを見ているようなファンタジー。

 堂玄(MLメンバー)

《作者から》

 解説を書いてくださったかたが「他の官能小説ではあまり見かけることができないタイプの特異な世界」を描いてきたのは、そのとおりです。
 この短編集に収録された作品は、いずれも中間小説誌に発表されたものです。
 SMプロパーの倒錯の世界をすんなり描けるSM雑誌や官能ポルノ文庫と違って、中間小説誌というのは、また違った媒体で「SM色は強く出さないでください」とか「近親相姦は露骨にしないで」など、何かと注文、制約が多いのです。
 つまり「ごくふつうのセックスをキッチリ最初から最初までねっとりと描く」というのが、こういった中間小説誌の小説の、基本的な作法なのです。
 それが難しい、というか、苦手でした。なぜなら、その分野ではベテランというか、「ツボをぴたりと押さえる」先輩作家人気作家はひしめいていて、そういうノーマル(笑)官能小説では何を書いても負けるのは目に見えていたからです。
 目の肥えたかたなら、ぼくの官能シーン、いわば濡れ場は「弱い」というのが分かってらっしゃると思う。ねっとり濡れ場が苦手の官能作家。(笑)
 つまり直球は投げられない。豪速球ではありませんから、まっすぐ投げたら打たれる。肩が弱いというのがバレる。
 そこで中間小説誌でのぼくのスタンスは、徹頭徹尾、「くせ球勝負」です。
 いつもコーナーぎりぎり、直球と見せかけて打者の手前でストンと落ちるようなの、あるいはふわふわと飛んでくる超スローカーブ。
 編集者が「うーん、これはストライクか」と頭をひねるようなのばかり書いていました。(笑)
 書き上げた作品をまず読むのは編集者ですが、二番目に読んでくださるのはイラストレーターです。
 読んでから、どういうふうな絵柄にするか考えていただくのですが、常識的なポルノからはずれた、意表を突くようなテーマが多いので、あるイラストレーターのかたに「館さんの作品につける絵は簡単じゃない。でも考えなきゃいけない分、面白いし楽しみだ」と言われたことがあります。たぶん、ほめて下さったんだと思う。(笑)
 ですから「ちょっと他では味わえない、くせのある味」というのが、いつしかぼくの持ち味になっています。
 そういう味がお好きなかたは「クセになって」楽しんでくださるのですが、そうでないかたは……どうなんでしょうね。「それなりに」楽しんでいただけてるのか、どうも自信はありません。
 ただ一つ言えるのは「当りまえの官能ポルノ小説を期待されるのなら、別の作家のをどうぞ」
 えッ、「当りまえのSM小説を期待されるのなら、別の作家のをどうぞ、だろう」ですか?
 はは、言えてる。(笑)←笑ってる場合か〜。

 

《初出情報》

「淫獣教育・ジュニア編」…………(初出「小説春秋」88年5月号)
「凌辱戦線異状なし」………………(初出「小説CLUB」88年5月増刊号)
「真夜中のアンドロギュノス」……(初出「月刊小説」88年7月号)
「神よ、わが閨房を覗くな」………(初出「小説CLUB」88年2月増刊号)
「聖娼婦の夜」………………………(初出「月刊小説」88年3月号)

《書誌情報》

本書は勁文社グリーンドア文庫シリーズとして文庫判型で刊行された。
デジタルテキストは電子書店パピレスよりダウンロード発売中。




ISBN4-7669-0784-1
1988(昭和63)年8月30日=初版発行
発行=グリーンドア社
発売=勁文社
定価=450円

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