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カバーイラスト 西村春海
カバーデザイン 吉原夢良 


美雪・魔性の遍歴

26

最後の布きれを剥がされ、
完全に露出させられた羞恥ゾーンに濃厚な口づけを受け、
美雪は恥じらいと喜悦の入りまじった悩乱の声を張り上げた。
紅鮭色の粘膜の奥へと舌をさし込むと、
さらさらした分泌液が溢れ出る。
匠太郎は深々とその匂いを吸った。
夢中で芳しい柔草の丘に鼻を埋め、
肉襞から溢れ出る蜜液を舐め啜った。
「あ、ああ。あーッ・・・」
甘く、切ない呻きを洩らしつつ、
美雪は下腹を匠太郎の顔に押しつけ両腿で挟みつける。
匠太郎の舌は充血してせり出した真珠のような肉芽の包皮を剥きあげた……

《読者からの解説と感想》

《内容紹介》
 突然かかってきた電話、それは単にイラストレーターの鷲田匠太郎への仕事の依頼 だったが、匠太郎と美人編集者美雪にとっては過去と現在を結ぶ「橋」だったのだ。
 匠太郎が受けた大手出版社の看板雑誌の仕事は、エロティックなイベントなどをイラストと記事で紹介する企画である。何故、無名な自分にこの仕事が回ってきたのか、訝りつつも匠太郎は引き受けた。
 「大都会の闇に蠢く−TOKIOアダルト夢紀行」の1回目は素人女性のストリップ、露出願望にスポットをあてた記事は好評で、2回目の少女愛クラブ、3回目のM男性用クラブへと続く。
美雪と匠太郎が一緒に取材していく中で、徐々に気になる美雪の秘密、何故彼女はガーターで吊るストッキングを穿くのか、何故縁故採用重視の出版社で彼女は編集者になれたのか・・・。それらは物語の後半で次第に明らかになるのだが、そこには、遠い昔のある少年と少女の記憶が絡んでいるのだった。

《感想》
 著者が館さんでなければ、タイトルから「ある女性の華麗な(?)男性遍歴」を想像される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、フランス書院の書き下ろし長編の「姉弟日記」、「養女」、「継母・背徳の部屋」と続いたミステリアスな流れは、本作品にも継承されていて、殺人事件こそありませんが、4回目の取材先でやはり事件が起きてしまいます。そして、その事件が17年前の事件と結びつくきっかけになるのです。出版社の編集者とイラストレーターという仕事での接点が、徐々に17年前への 事件へと遡っていく記述はすごいとしかいいようがありません。
 また、事件にいたるまでにはいろいろと伏線が張られており、まさにポルノ的推理小説といえると思います。実は、本作品には上記の登場人物の他に物語においてある意味を持つ者が登場します。尤も、台詞は「ミャアオ」くらいしかないのですが(笑)。
 この猫の存在って、とてもいいですね、いろんな意味で。  出版社の裏側、そして精神病院といえばある意味タブーの世界で、ともすれば重く暗いイメージになりがちですが、本作品を含めて館さんのミステリーにはそんな印象を受けないから不思議です。しかも、決してポルノでカモフラージュしている訳ではなく、ポルノとミステリーが深く絡み合っているので、館さんの作品にはとても深い味わいがあるのです。
 また、当然ですが、ミステリだけでなくエロティックな場面もいいですね。最初の取材の素人ストリップ大会では4人の出演者の表情などが記述してあったり、読者も自分がその場にいることを想像できる仕組みになってますし、女教師がインタビューの中で目覚めた契機を告白したりしていて、背景描写もたっぷりあるので、ポルノとしても充分に楽しめる作品です。
 余談ですが、女教師の露出願望についてはこの作品のあとの「女教師・露出授業」や「女教師・濡れた下着」(ともにフランス書院文庫)でもテーマになっていますね。
 最後に、これから読もうとされている方にあえて申し上げますが、最後の最後に明かされる更に昔の秘密を知りたければ、最終ページまで読み飛ばしはできませんよ。
                              (文責 堂玄)

《作者から》

 この作品を書く少しまえ、ぼくは東京郊外の山あいにある精神病院に足繁く通っていた。いや、ぼくの精神状態に問題があったというわけではなく。(笑)
 ノストラダムス研究家でもあった、といえば覚えている人もいるかもしれない。川尻徹博士という精神科医が当時、そこの院長だった。ぼくは彼を取材して雑誌に連載し最後は一冊の本にまとめ上げた。題名は『滅亡のシナリオ』(祥伝社NONブックス、1985刊)。
 (余談だが、後に松本智津夫という人物から著者の川尻博士宛に同書の感想と長い質問を書き連ねた封書が送られた。それに何が書かれ博士がどう対応したかは、博士が90年に逝去されたので知ることはできない。ノンフィクションライターの立花隆氏は、後年、麻原彰晃こと松本智津夫がこの書に触発されてこの世にハルマゲドン(最終戦争)をもたらそうと妄想し、オウムによるサリン事件をひきおこした、と書いた)
 博士の経営する病院は開放病棟での治療が主で、訪問したぼくは病院のかなり内部まで迎えいれられた。患者としてではなく経営・運営する側から精神病院というものを眺めることが出来たのは、ぼくにとってかなり新鮮な体験と知識を与えてくれた。
 言うまでもなく、この体験と知識が本書に投影されている。
 川尻博士は後にこの精神病院を手放したので、今は別の組織に運営されるまったく違った形の病院になっていると思われる。交通があまりに不便なので、博士の死後一度も訪れていないが、この書を読み返すたびに懐かしく思いだされる不思議な場所である。
 この書に登場する精神科医もまた、川尻博士がモデルになっている。本人は意図しなかったであろうが、人間の精神の営みについて、さまざまなヒントやアイデアを与えてくれた博士に感謝し冥福を祈りたい。

『滅亡のシナリオ』についてはこちらを参照のこと。

 

《書誌情報》

本書はフランス書院よりフランス書院文庫シリーズ(通算ナンバー0185)として文庫判型で刊行された。
デジタルテキストは発売されていない。




ISBN4-8296-0185-X
1988年5月10日=第一刷発行
発行=フランス書院
定価=400円


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