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カバーイラスト 井川泰年
カバーデザイン 田中保次


姦られる

(文庫版)

09
《収録作品》

『姦られる』
『獣たちの聖夜』
『ストロベリーは秘密の香り』
『淫狼は人妻を狙う』
『濡れた蘭は死の匂い』
『禁断の海に溺れ』

解説『館淳一について知っている二、三の事柄』 関口苑生


 雪夫の裸身が、椅子に座ったまま震えている。激しい快感が全身を駈けめぐりだしたからだ。
 弟の体に顔を埋めた絵里子は、いまやすっかり勢いをとりもどした脈打つ器官を根元まですっぽりと含んでいる。舌と歯と粘膜が性愛の無音なる音楽を奏で、それはいま熱狂の度を増してゆく。
 二度、三度、フラッシユの青白い光が裸身を鮮烈に灼いた。恭介がボラロイドに姉弟の痴態を記録しているのだ。しかし、姉も弟もともに肉の悦楽に没頭して、気にもかけてない。絵里子の繊やかな指が、下肢を、股間を、時には肛門のほうまで優しく愛撫し、雪夫の昂奮を煽りたてている。
「うう、たまらない……」
 あまりにも刺激的な姉弟の愛欲行為だ……。
                    (巻頭作品『姦られる』より)


《推薦の言葉》

センチメンタル・バイオレンスと呼びたい  映画監督 高橋伴明

 館氏の作品に接していつも感じることだが、女の極めつけのテクニックに瞬時に昇天させられてしまうのに似て、その強引なまでの牽引力で一気にプロローグからエピローグまでイカされてしまう。そのくせ作者の執拗なまでのディテイルへのこだわりと血のこだわりに、いつまでも静かに浸っていることに気づく。
 とりわけ、我々七十年安保世代は、中に位置したものであれ、またその逆であれ、作者の曳きずってきたこだわりを共有してしまう――のならば、このシリーズはバイオレンス・ポルノということらしいが、館氏の作品については、センチメンタル・バイオレンスと敢えてそう呼びたい。
私も?またセンチメンタル・ハードボイルド映画を志向し、その作業の最中である。曳きずってきたものを吐きだし尽くすまで、映画はやめられない、燃えカスになることのみがとりあえずのテーマだ。悔しいが館氏は燃焼後の、その次の自分をすでに見ている気がする。

《作者より》

『姦られる』が、新書サラ・ブックスのシリーズとして刊行されたのが1981年。しばらくの間、新書ポルノの時代が続きましたが、やがてフランス書院が“フランス書院文庫”シリーズを出して、猛然とSMハードポルノ小説の世界を席捲しだすと、二見書房も新書シリーズを廃止、文庫本で対応することになりました。
 すでに、ぼくの「られる」三部作に『瑠美子十六歳』と4作を出していた二見書房は、これらの作品をすべて新しい文庫シリーズに移し替えることにしたのです。
 そういうわけで、本書が文庫デビューの最初の作品集ということになります。と同時にマドンナメイト文庫の創刊作品でもありました。

 文庫化にあたり、こういう官能モノには珍しく解説文がつきました。
 著者と親しく、顔までよく似ていて「弟ではないか」と言われた、気鋭の文芸評論家、関口苑生氏が、要領よく「館淳一とはどんな作家か」を説明してくれています。

《書誌情報》

 本書は二見書房サラブレッド・ブックス(通称サラ・ブックス)のシリーズとして新書判型で刊行された短編集であるが、シリーズ廃止にともない、マドンナ社よりマドンナメイト文庫シリーズ(た1-1)として文庫判型で刊行された。
 収録作品は同一だが関口苑生氏の解説が付加された。(新書版はリストNo.1参照)
デジタルテキストは二見書房おとなの本屋さんで購入できる。


ISBN4-576-85086-5
1985(昭和60)年12月30日=第一刷発行
発行=マドンナ社
発売=二見書房
定価=400円


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