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カバーデザイン 不明


瑠美子十六歳

08

《収録作品》

『ロリータの罠』
『凌刑夜』
『秘密酒に酔い痴れて』
『瑠美子十六歳』


淫らな血が戦慄する鬼狼たちのバイオレンス

もう地獄へ堕ちてもいい!
若鮎のような肢体を
思うさま責め嬲れるのなら……
倒錯した快楽への期待が
中年作家、霜田の心を逸らせる
禁断の青い果実――久美子
そして瑠美子の姉妹は
甘く苦い味で男の下を痺れさす

《読者からの解説&感想》

ロリータの罠
 東京で会社の金を使い込み、故郷の街・汐見市で鬱屈した日々を送る蕩児・三田村
喬二は、噂をたよりに川向こうの曙町におもむき、『しま』という小料理屋を営む年
増の娼婦・志摩子と、念願のSMプレイに溺れる。
 翌日、ふたたび『しま』を訪れた喬二に、志摩子が言う。
「特別なサービスもしてあげるわよ」
 それは、志摩子の十一歳になる娘・由紀恵をまじえた3Pプレイだった。
 すっかりこの淫らな母娘の虜になってしまった喬二は、ふたりを独占するために、
ヒモであるヤクザ・荒源の殺害を計画するのだが……。

   
(くそ。まったく憂鬱で退屈な町だな)という主人公のモノローグに青春のやるせな さが凝縮されている。  館ワールドでは御馴染みの汐見市が初登場する記念碑的な作品。  主人公の鬱屈した心情とあいまって、街の描写にも暗い情念が宿り、まるで実在の 街を彷徨しているかのようなリアリティが醸し出される。  作品の舞台となる地理や地形、建築物の構造などに丹念なディテールをほどこす作 者の嗜好は、一度読んだらたちまちのうちに読者をその世界の住人にしてしまう魔力 を秘めている。  また、短い枚数の中に見事な起承転結があり、優秀なストーリーテラーとしての作 者の魅力を充分に堪能出来る作品である。 凌刑夜  大手家具チェーンの配送部で運転手をしている健と博志は、ある日配達先のヒステ リックな年増女から、あらぬ疑いをかけられた。  同居している妹の下着を盗んだというのだ。  弁解も聞いてもらえず、一方的になじられ、会社の上層部に抗議するとまで言われ た健と博志は、この屈辱を晴らすべく、豪邸に侵入して美しい年増の姉妹を凌辱する 計画を立てる。  そして、下着泥棒の意外な犯人が判明した時、豪邸は近親相姦の修羅場と化して行 くのだった……。    
 この作品にも、初期作品に特徴的な鬱屈した青春の疼きのようなトーンが濃厚に漂 っている。のちに洗練され、開花する華麗な館ワールドの片鱗は見えるが、この頃の トーンを愛する読者も少なくないに違いない。  いわゆる強制凌辱が行われるが、餌食となる姉妹が徹底的に嫌味な人間に描かれて いるために、後味の悪さは見事に払拭されている。  地方出身者で、コンプレックスの塊のような博志が、凌辱プレイが進むにしたがっ て、どんどん自信をつけていくあたりの描写が、健とのかけあいの中で浮き彫りにさ れていく過程が楽しい。  また、ふたりの会話の中に『バーバレラ』という風俗店の名前が登場するのも楽し い。 『バーバーレラ』、ロジェ・ヴァディム監督、ジェーン・フォンダ主演のエロティッ クSF映画の大傑作ですよね、館さん! 秘密酒に酔い痴れて  スーキレストラン『キャニオン』でアルバイトをはじめた絹川まり子は、先輩ウエ イトレス・光恵が、マスターを含む三人の男の愛人奴隷として調教されていることを 知って愕然とする。 「わたしの後釜にならない?」  光恵の言葉に動揺するまり子だったが、田舎の父親が金を騙しとられ、早急に金の 必要にせまられ、思い出したのは、縛られ、鞭打たれる光恵の姿だった。  こうして三人の男の愛人奴隷となったまり子は、次第にマゾとしての快楽に目覚め てゆき、美しさを増して行った。  ところが、メンバーのひとりが撮影したビデオが流出したことによって、悪徳弁護 士の罠にはまったまり子は、別荘に監禁され、獣姦を含む壮絶な調教の獲物にされて しまう。  このままでは、まり子は廃人にされてしまうかもしれない……。 『キャニオン』のマスター・和雄は、猟銃を手に悪徳弁護士の別荘へと乗り込んで行 く……。  チョコレート色のパンストに、むっちりした太腿……。  こんなウエイトレスがいるステーキレストランは、さぞ食欲をそそられて繁盛する に違いない、という気にさせる作品である(?)。  マスターを含む三人のご主人様たちが、妙に小市民的なのもほほえましい。 瑠美子十六歳」  翻訳家・霜田泰介は、行きつけの喫茶店『マリーン』のウエイトレス・久美子のミ ニスカート姿を愛していた。  ある日、久美子が意外なことを言い出す。 「ね、先生。久美子の体に興味ない?」  東京でホテトルをし、今は叔父であるマスターの愛人でもある久美子は、アメリカ に渡るための資金調達のために、泰介の愛人になりたいと言うのだ。  この話に乗った泰介は、久美子を自分好みのマゾ奴隷として調教する。  だが、何かが物足りない。  泰介にはセーラー服の美少女をいたぶりたいという願望があったからだ。  そんなある日、久美子は妹の瑠美子を泰介に紹介する。  セーラー服の似合う、いたいけな美少女!  泰介の心を見透かしたように、久美子は実の妹とのレズプレイを披露する。  そして……。    
 淫らなビデオを観ながら、実の姉妹がレズプレイを繰り広げる様を、そっと覗き見 る。  二重の窃視感覚が素晴らしいクライマックスを演出する。  明らかに館淳一は、ニューメディア時代の作家である。  その後頻繁に登場するパソコン通信やインターネット同様、個人が映像メディアを 自在に操り、快楽の道具として駆使するビデオ・システムの楽しさが、このシーンで は存分に描かれる。先端のテクノロジーを素早く吸収して、快楽の道具に仕立てる手 腕には惚れ惚れさせられると同時に、メカニズムにも下着同様のフェティッシュな愛 情をそそぐ作者の特質が露わにもなる仕掛けだ。  甘美なレズシーンは、のちに『セーラー服 恥じらい日記』『セーラー服 下着調 べ』で開花する館ワールドではとりわけ重要なモチーフである。  本作品集は、初期の大藪春彦(「野獣死すべし」とか、ね)にも通底するバイオレ ンスな青春挽歌と、のちに絢爛と花開く館ワールドの過渡期的作品が収められてい る。 ビートルズでいえば『ヘルプ!/4人はアイドル』から『ラバーソウル』に相当する 興味深い一冊である。 「可愛いわ、瑠美子のここ……」  そういいながら花びらに沿って指を蠢かす姉娘は、やがて女体のいちばん敏感な部 分、真珠のように丸い肉のつぼみに指の腹をあてがった。勃起はしているが無理に包 皮を剥きあげず、そうっと愛撫をしてやると、たちまち、 「あ、ああっ、……お姉ちゃんっ!」                         (「瑠美子十六歳」)  あ、ああっ、……。  ↑こういうのが、いちばん好き!                  詩織(MLメンバー)

《著者より》

この時期の短編はもっぱら『SMスナイパー』、『別冊SMスナイパー』(後に『SMスピリッツ』と改名)誌に掲載されたものが多いのですが、『ロリータの罠』は珍しくひさびさに注文を受けた『別冊SMファン』誌に掲載されたものです。
おりからワープロを使い始めた頃で、ワープロからプリンタで出力されたハードコピーを持参したら、編集部で非常に珍しがられた記憶があります。(笑)
ちなみにこの時のワープロは富士通の OASYS100J でした。

ぼくの作品には、よく架空の地名が登場します。定番は「汐見市」「トド岬」「ときわ市」それに「夢見山市」ですが、「汐見市」が登場したのはこの作品が最初です。
館淳一作品のなかでは、その意味で記念すべき短編と言えるかもしれません。(笑)

『凌刑夜』は雑誌掲載時は別のタイトルだったはずです。
未確認ですが『SMスピリッツ』誌昭和55年4月号『淫鬼の舞う館』の可能性が大きい。
大きな洋館に住む未亡人とその妹。未亡人の息子。三人の住人はある夜、二人の若者に襲われ、凌辱の限りを受けます。彼女たちがなぜ襲われたかというと……。
本来は善良な若者たちを凶暴な獣とさせた原因は、実は女二人の性格にあるのですね。非常にヒステリックで、いきなり逆上し、いったん逆上すると人の話を聞こうとしない。そういう性格の人を知りませんか。
実は、ぼくが別荘管理人時代、そういうオーナーがいて(笑)悩みに悩まされました。これが姉妹なんですが、どちらも同じ気質。いきなり逆上する。そうなると手に負えません。二人並んで逆上されると左右から罵詈雑言のパンチを浴びせられるわけで、別荘建築時からさんざん悩まされました。その怨みが作家になってから作品上で爆発したというわけです。
まったく個人的な怨みつらみが動機になっている作品というのは、森村誠一さんもよくお書きになるけど、これが見本です。ぼくの作品で女性がむごく殺される例は少ないのですが、この作品では二人とも息子に惨殺されてしまう。いかにぼくの怨みが深かったかお分かりでしょう。(笑)

『秘密酒に酔い痴れて』も収録にあたって改題されたものです。
心あたたまる佳作です。(笑)私鉄沿線の駅前商店街にあるステーキレストランのウエイトレスとしてアルバイトを始めたまり子は、先輩ウエイトレスが店のオーナーや商店街のおじさん二人によって飼育される「共有奴隷」であることに気づかされます。
郷里に帰ることになった先輩は、まり子を自分の後釜として誘惑、オーナーたちに差し出します。めでたく共有奴隷として幸せなマゾ生活を味わうまり子でしたが、思いがけぬところから不幸が……。獣姦まで登場する凄惨な責め場を経て、もちろん最後はハッピーエンドです。
これを読まれて、「はて、どこかで……」と思われたかたはえらい。(笑)
日本出版社から刊行された長篇、『愛奴創生』の繭子は、この短編のまり子がもとになっています。ちゃんとステーキハウスが登場するでしょう。

『瑠美子十六歳』は、海岸沿いの地方都市で「先生」と呼ばれる翻訳家が、女子高生瑠美子にメロメロになる、というお話です。
初出時は50枚の短編ですが書き足されて倍ぐらいの量の中編とされました。
とんでもないお姉さんのおかげで、瑠美子は幸せなマゾ奴隷となって「先生」に仕えます。これも心温まるお話です。(笑)このホームページからダウンロードできますので、読んでみてください。

《書誌情報》

本書は二見書房サラ・ブックスのシリーズとして刊行された新書版である。
同シリーズの廃止に伴い、マドンナ社のマドンナメイト文庫で文庫化された。
ただし題名は『瑠美子妹十六歳』と、「妹」の一字が追加された。
収録作品はまったく同一である。(リスト参照No.21)
中編『瑠美子十六歳』は、当ホームページよりフリーダウンロードできる。


ISBN4-576-85062-8 CO293
1985年(昭和60年)10月20日初版発行
発行=二見書房
定価=780円
(絶版)


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