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カバーイラスト 新井田孝
カバーデザイン 勝俣正希

『闇から来た猟人』

《収録作品》

『美しい悪魔』
『背徳の構図』
『牝豚13号』
『鋼鉄の拷問者』
『妄執の部屋』
『闇から来た猟人』


 一糸纏わぬヌードになった美鹿子は、ベッドに横たわった。
すんなりとした若鹿のような肢体の上に、素っ裸になった雪彦がおおいかぶさる。
「あわてないで。時間はあるから、ゆっくりね……」
 二十一歳の女子大生と十四歳の少年は抱き合って唇をかわした。
ネットリと濃厚なディープキスだ。
少午の唾液を美鹿子は飲んだ。舌の根が痺れるくらいに強く吸われる。
少年のほっそりした裸身が、押さえようのない昂奮に
ぶるぶる震えているのが、何ともいえずにいとおしく、
家庭教帥は教え子の下腹部に手を伸ばし、
痛いぐらいに突き立っている少年の男性器官をそっと握り、
やわやわとさすってやるのだ。
「ああー、先生……」
快美感を切なげに訴え、少年は甘えるように身をくねらせ、
裸の肌と肌をこすりつける。
(『美しい悪魔』より)

《作者より》

『SMスナイパー』を発行しているミリオン出版が、1982(昭和57)年、『スナイパーノベルズ』という新書版のシリーズを刊行することになり、メインの柱として蘭光生、千草忠夫の両巨頭と並んで、ぼくを起用してくれました。
ようやく一人前のSM作家と認めらられたのかなあ――という感慨を味わった、記念碑的な作品です。

収録作品は『SMスナイパー』『別冊SMスナイパー』『別冊SMファン』に掲載された短編集です。二見書房の『姦られる』三部作より以前のものが多いですね。

これの発刊を記念して中野のSMクラブ『クイーン』で蘭、千草、館の三人で座談会をやったのですが、この時、初めて千草忠夫さんにお目にかかりました。
千草さんはかねてからぼくの作品に注目してくれていたようで、感激すると同時にたいそう話が弾みました。
当時SM業界にデビューしたばかりの刺青女王、花真衣さんを皆で縛りあげたのが楽しい思い出として残っています。
この時の座談会は『別冊SMスナイパー』(後の『SMスピリッツ』)1983年2月号に掲載されました。

ちなみに『闇から来た猟人』と同時に発売されたシリーズ第一弾は、蘭さんが『淫獣』、千草さんが『レイプ環礁』でした。


『猟色・サロメの唇』の渡辺良子(左)と清水季里子

《作品紹介》

『美しい悪魔』は翌58年(1983)、にっかつロマンポルノ『猟色・サロメの唇』という題で映画化されました。
出演は渡辺良子、早坂明記、清水季里子。監督は藤井克彦です。
母一人子一人のわがまま息子の家庭教師を頼まれた女子大生が、自分の肉体を餌に少年を勉強させてゆく――という物語。最後はレズ関係になった母親まで餌として与えてしまうという、おっそろしい物語です。(笑)
プロデューサーは女子大生がマゾの母親を鞭で打って(頼まれていやいや打ってるうちに本気になってゆく)母親が失禁してしまう部分がいたく気にいったといい、その部分はていねいに映像化してくれました。これはビデオになっていますので、今でも見られるかもしれません。

『牝豚13号』(原題は『牝豚13号・ユカの悦び』、『SMスナイパー』昭和54年9月号掲載)は後に『姉弟・調教儀式』などで完成したSM痩身術(笑)のさきがけとなった作品です。
病気とその治療のために太ってしまった美少女アイドルが所属プロダクションの社長に言われて連れてゆかれたのが、ハイテク機器とロボットで女体を責めに責めて痩せさせる美容クリニック。そこで彼女を待ち受けていたのは、想像を絶する痩身術でした――。
当時から「SMは美容にいい。痩せるならSMだ」とぼくは主張していたのですね。(笑)

『鋼鉄の拷問者』は、女性がいると襲いかかり鋼鉄のペニスで犯しまくるレイプ専用ロボット、RP―1が登場します。誰ですか、笑ってるのは。(笑)
この凌辱ロボットはちゃんと内臓されている豚の精液を射出して女体を汚すのです。
この時期、『SMスナイパー』誌の要請で、メカニズムやハイテクを用いたSMというテーマで作品を書いていたのですね。ですから奇妙な拷問・凌辱機器をやたら考えだしたものです。

『闇から来た猟人』は、『別冊SMファン』でシリーズものとして書いていた女性探偵・美鬼子のシリーズです。
これは数作書いたのですが、若書きのため、ぼく自身も捨ててしまって手許にないものが多く、短編集に収録されたのはこれ一本ではないでしょうか。館淳一の作品の中では異色のものです。
人気美人女優が自宅で侵入者に輪姦され、脅迫されます。
依頼を受けて調査にあたったレズ探偵も犯人たちの手中に落ち、二人並べて凌辱されます。
その舞台は「東京の北西部A市にあるAキャンプ」。朝霞キャンプですね。当時は返還後数年を経て放置されていたため、広大な施設がゴーストタウンと化して腐れながら崩れ落ちるにまかせていました。
ぼくは廃虚フリークなので、フリー編集者時代、ここでヌードを撮ったら面白いだろうと思い、何度か探索に行ったことがあり、中でも『ドレイク・シアター』という劇場の廃虚がすっかり気に入りました。舞台に草が生えてるのだ。(笑)。
※朝霞キャンプは今は光ケ丘団地となり、廃虚も姿を消しました。

《初出情報》

『背徳の構図』………………『SMスナイパー』1982年2月号
              (原題『母よ我に美菊を捧げよ』)
『美しい悪魔』………………『別冊SMスナイパー』1981年1月号
              (原題『勉強部屋の美しい悪魔』)
『牝豚13号』…………………『SMスナイパー』1979年9月号
              (原題『牝豚13号・ユカの喜び』)
『鋼鉄の拷問者』……………『SMスナイパー』1979年12月号
『妄執の部屋』………………『別冊SMファン』1976年11月号。
『闇から来た猟人』…………『別冊SMファン』1976年7月号。

*初出情報を調べてくださった黒田明氏(『新青年』研究会)に感謝します。

《書誌情報》

本書はミリオン出版よりスナイパーノベルスシリーズとして新書判型で刊行された。
この短編集はのちにまったく同じ題で文庫化された(リストNo.23参照
ただし文庫版からは『牝豚13号』が除かれ、替わって『セーラー服の逆襲』が収録されている。




ISBN4-88672-601-1 CO293
1982(昭和57)年11月25日初版発行
発行=ミリオン出版
発売=大洋図書
定価=780円

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